第35話 戦いの終結

アルケミスは追い詰められたことを悟ると、冷や汗を浮かべながらも最後の悪あがきを試みた。




彼は残されたわずかな魔力をかき集め、呪文を詠唱し始める。


低く響くその声が、空気を震わせ、周囲には不気味な黒い霧が漂い始めた。




「ふん…この私が、ここで終わると思っているのか…?!」


アルケミスは震える声で言い放ち、指を絡めて複雑な手の印を結ぶ。


魔力を失いかけた体から無理やり力を引き出し、残された精霊たちの気配を探り寄せようとする。




だが、ルナとアリーシャは冷静だった。


アリーシャが冷たく言い放つ。「もう、あなたの企みは通用しないわ。」




その言葉にルナも続く。「精霊たちはあなたに怯えている…あなたの支配はここで終わりよ。」




アルケミスの顔が青ざめる。彼は何とか魔力を使って逃げ出そうと足掻くが、二人の攻撃がそれを許さなかった。アリーシャの光の剣が、アルケミスの防御を破り、肩口をかすめる。


その瞬間、アルケミスは思わず叫び声をあげ、黒い霧に包まれながら後ずさりした。




「くっ…覚えていろ、必ず…!」






「逃がさない…!」


ルナが低く決意を込めて言うと、アリーシャもまた剣を構え、隙を見せまいと鋭い視線を送った。


彼女たちの眼差しに、アルケミスは一瞬だけ恐怖を浮かべ、震えるように後ずさる。




「無駄だ…お前たちに、私を止められるものか…!」


アルケミスは自らに言い聞かせるように呟くが、声はどこか弱々しく響く。


必死に残り少ない魔力を霧へと注ぎ込むが、その霧さえも力を失い、薄れていく。




アリーシャが冷たい声で告げる。「あなたの支配は、ここで終わりよ。」




アルケミスの顔には、はっきりと絶望の色が浮かんでいた。


しかし、彼は最後の抵抗として霧の中に紛れ、わずかでも姿を隠そうとする。




「いずれ…いずれ必ず戻ってくる…!」


アルケミスが最後に吐き捨てたその言葉は、虚しく空に消えた。


そして、残された霧もまた、風に吹かれて完全に消え去る。




静寂が場を包み、ルナとアリーシャは互いに短く頷きあう。


彼女たちは勝利を確信し、しかし、心の奥には再び来るかもしれない戦いへの覚悟が浮かんでいた。

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異世界デイサービス はんぶん @hiroharufemfem

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