第34話 アリーシャ・ルナVSアルケミス
アルケミスは、自分の胸元を押さえ、震える声でつぶやいた。
「どうして…こんなことが起こるなんて…」
視線を下げると、手のひらからは魔力の光が消えかけ、ただの虚無が広がっていた。
彼の顔には動揺と恐怖が浮かび、かつての威圧感などまるで影を潜めている。
「私の、精霊への支配が…」アルケミスは愕然として周囲を見渡す。
確かに従えていたはずの精霊たちが、どれも自分から遠ざかるように消え去っていくのが見える。
その一つ一つの姿が、彼にとっては信じがたい現実だった。
自分の強大な力は精霊の支配によって成り立っていた。
その力が失われた今、彼はかつてのような絶対的な存在ではない。
「まさか…この私が、ただの人間にここまで追い詰められるとは!」
アルケミスは苛立ちを込めて叫んだが、その声はどこか震えている。
かつての余裕はなく、代わりに不安と焦りが胸を支配していた。
ナオル、ルナ、そしてアリーシャの視線が自分に突き刺さるのを感じ、ア
ルケミスは冷や汗を流した。
「私の計画が、ここで崩れるというのか…!」
心の中で、彼はそれを決して許せないと思ったが、どうすることもできない現実に苛まれていた。
アルケミスが弱りきっている隙を見て、ルナとアリーシャが立ち上がった。
互いに無言のまま頷き合い、二人の間には戦友のような強い結束が生まれていた。
「アリーシャ、準備はいい?」ルナが力強く問いかける。
アリーシャは小さく息を吸い込み、鋭い目つきでアルケミスを睨みつける。
「もちろんよ。…あんな人にやられっぱなしじゃ、ドラゴニアの誇りが許さない!」
アリーシャの声には決意が込められており、身体から溢れる魔力が徐々に増していくのがわかる。
ルナも同様に万物の声を聞く者としての力を解放し、精霊たちの力を借りるために集中した。
精霊の囁きが彼女の耳に響き、その力が再び自分のものとなる感覚に胸が高鳴る。
「…行くよ、アルケミス!」二人の声が重なり、彼の方に向かって一斉に突進した。
アリーシャの刃が鋭く輝き、アルケミスの目前まで迫る。
アルケミスは慌てて防御の構えを取るが、失った魔力のせいで反応が鈍く、いつもの俊敏さはない。
その隙に、ルナが魔法を発動させ、精霊の風を操ってアルケミスの動きを封じた。
「逃がさないわ、もう!」ルナの声に怒りが宿り、彼女の魔力がさらに高まる。
「アルケミス、これはあなたの仕組んだ戦いの代償よ!」
アリーシャもまた声を張り上げ、次の一撃を繰り出そうと構えを取った。
力を取り戻した二人の迫力に圧倒され、アルケミスの顔は恐怖に歪んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます