桜舞う春に恋をして 〜彼と彼女の選択〜

島原大知

本編


桜井陽香は、鏡の前で自分の身なりを確認した。ストライプのグレースーツに白いシャツ、ネイビーのパンプス。一見、仕事もプライベートも充実したキャリアウーマンに見える。だが内面は違った。迷いと不安、そして大きな葛藤を抱えていた。

「いってきます」と家を出る陽香に、同棲中の彼氏・綾野慶太が声をかける。

「待って。今日は早く帰ってこれる?両親に挨拶したいって言ってるんだけど」

慶太の問いかけに、陽香は思わず眉をひそめた。言葉を選びながら答える。

「ごめん、今日は無理。プロジェクトの締め切りが近いの。でも、そのうちちゃんと両親に挨拶に行くから」

優柔不断な返事に、慶太は不満げだ。だが、陽香にはこれ以上の言葉が出てこない。会社に向かう電車の中、ため息をついた。

キャリアを重ねることと結婚すること。本当は両立できるはずなのに、どうしてこんなにも難しいのだろう。迷いを振り切れず、ただその場しのぎの言葉を繰り返す自分が情けなかった。

会社に着くと、陽香の表情は変わる。仕事モードのスイッチが入った。広告代理店の朝は早い。オフィスには既に活気があふれ、無数の会話が交錯していた。

「おはようございます」と元気な声で挨拶を交わす。その声とは裏腹に、陽香の胸中は晴れない。目の前のPCに広告コピーの原案が並ぶ。納得のいく言葉が、まだ見つからない。

「桜井さん、ちょっといいですか?」

聞き慣れた低い声に、陽香は顔を上げた。プロジェクトリーダーの井上真司だ。真面目そうな眼鏡の奥の瞳は、昨日よりも真剣さを増している。

「コピーの案なんですが、もう少し思い切ったものを考えてみませんか。サブのコピーはいいんですが、メインはインパクトに欠けるんです」

真司の言葉は厳しい。だが、その口調には非難よりも、仲間を鼓舞するような熱が込められていた。

「分かりました。今日中に再考します」

気を引き締める陽香に、真司は笑顔で頷いた。ストイックな仕事ぶりで知られる彼だが、最近は陽香にも気さくに話しかけてくれる。

「期待してます。桜井さんの引き出しなら、まだまだあるはずです」

そう言って立ち去った真司の後ろ姿を、陽香は見つめていた。彼の仕事への真摯な姿勢に、改めて心を打たれる。

(私も、もっと頑張らなきゃ)

心に火がついた。目の前のPCに向かい、再びコピーと向き合う。言葉を絞り出すように、一文字一文字、キーボードを叩いた。

窓の外では、春の陽射しが目に痛い。季節は巡り、新しい年度が始まった。変わらなければいけない。去年の自分を乗り越えなければ。

昼休み、食堂の大きな窓からは、桜並木が見える。濃いピンク色の花びらが、風に舞う。

「キレイだね、桜」

隣に座った真司が呟いた。うなずく陽香。いつもは忙しくて、ゆっくり花を愛でる暇もない。けれど今日は、その美しさが胸に迫ってくる。

「何か、新しいことが始まる予感がする」

真司の言葉に、陽香は驚いて彼を見た。心を見透かされたような気がして、どきりとした。

「私も、何か変わらなきゃって思ってたところなんです」

そう言えば、自然に笑みがこぼれる。真司も微笑み返してくれた。

「何か新しいこと、一緒に始めてみる?」

真司の何気ない一言が、陽香の心に火を点けた。新しい広告コピー、新しい自分。その言葉をきっかけに、陽香の心は軽やかに弾んだ。

仕事に恋に、新しい挑戦の予感。まだ形のない未来に、期待が膨らむ。この春、変われるかもしれない。

窓の外を見遣る。桜の花びらが、風に乗ってひらひらと舞う。それは新しい季節の始まりの合図のようだった。

そして陽香は、大きく息を吸い込んだ。胸の奥に灯った、小さな炎を感じながら。



陽香と真司のコンビは、見事に新しい広告コピーを生み出した。斬新な言葉の数々に、クライアントも満足げだ。

「今回のコピー、反響がすごいよ。SNSでもバズってる」

企画書を手に、真司が嬉しそうに話す。その横顔を見つめながら、陽香も心の中でガッツポーズをした。

二人の息はぴったりと合い、アイデアが次々と湧き出してくる。仕事の楽しさを再確認した陽香は、かつてない充実感に包まれていた。

けれどその充実感とは対照的に、プライベートでは暗い影が差していた。

「最近帰りが遅いね。プロジェクト、大変なの?」

夕食の席で、慶太が不機嫌そうに尋ねる。

「うん、ちょっと詰まってて。でも、もうすぐ一段落つくはず」

言葉を濁す陽香。本当は、真司との時間が心地良くて、つい夢中になっているだけなのだ。

「このままじゃ、いつまでたっても結婚できないよ」

グラスを傾ける慶太の表情は、陽香に見えない。だが、その声のトーンから不満が伝わってくる。

「ごめん。でももう少し、自分の時間が欲しいの」

感情を押し殺すようにそう告げる陽香。慶太との時間より、仕事や真司との時間の方が充実しているという事実に、罪悪感を覚えつつも。

次の日。駅に向かう途中、陽香は公園に立ち寄った。

子供たちの歓声が響く中、ベンチに腰かける。あたりを見回すと、ビジネススーツ姿の男女が行き交っている。公園の向こうには、高層ビルが聳え立つ。

都会の喧騒の中で、陽香は自問した。

(私は何を求めているんだろう?)

仕事、恋愛、結婚。女性にとって、それぞれが人生の大きな岐路だ。本当は、全てを手に入れたい。けれど、それがこんなにも難しいなんて。

「桜井さん?」

聞き慣れた声が、背後から近づいてくる。振り返ると、真司が立っていた。

「井上さん……どうしたんですか?」

「ちょっと気分転換に散歩してたんです。桜井さんは?」

「私も、同じです」

そう言って、陽香は小さく笑った。数日前、昼休みに見た桜を思い出す。あの時、真司も同じことを感じていたのだろうか。

「座ってもいいですか?」

真司が隣に腰かけると、背筋がピンと伸びる。いつもは冷静な彼も、今日は少し緊張しているように見えた。

「あの、実は言いたいことがあって……」

切り出した真司は、一瞬言葉を詰まらせる。陽香の鼓動が、少し速くなった。

「桜井さんと一緒に仕事をして、すごく刺激を受けています。もっと一緒に、新しいことにチャレンジしたいなって」

そう言って、真司は陽香の瞳をまっすぐ見つめた。その眼差しの奥に、強い決意を感じる。

「私も同じ気持ちです。井上さんと一緒なら、もっと成長できる気がするんです」

陽香も負けじと真司を見つめ返す。胸の奥で、小さな炎がメラメラと燃え上がるのを感じた。

風が吹き、草木がさわさわと音を立てる。遠くで電車の警笛が鳴った。

日常の風景の中で、二人の思いは静かに重なり合った。新しい一歩を踏み出す予感に、胸が高鳴る。

「じゃあ、これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ」

握手を交わし、笑顔で見つめ合う。

公園を後にした陽香は、いつもより早足で会社に向かった。胸の奥に宿った炎を燃料に、新しい一日が始まる。

けれど、陽香が選んだ道は平坦ではない。

「今日も帰り遅いの?」

慶太から、少し苛立ったようなメッセージが届く。

「ごめん、もう少しかかりそう」

送信ボタンを押し、陽香は頬を押さえた。伝えるべきことを先延ばしにしている自覚はある。けれど、まだ心の整理がついていない。

強がりを言いながらも、本当は不安でいっぱいだ。自分の道を選ぶことの難しさを、改めて思い知らされる。

夜の街を歩きながら、陽香はふと空を見上げた。オフィス街の明かりに遮られ、星はほとんど見えない。けれど、どこか遠くで、小さな光が瞬いているような気がした。

それは希望の光なのか、それとも別れの予感なのか。

答えの出ない問いを胸に、陽香は足を速めた。夜風に吹かれながら、自分だけの答えを探し求めて。



週末、陽香は久しぶりに実家へ帰省した。都会の喧騒から離れ、のどかな田舎町の風景に心が洗われる。

「陽香、元気してた?」

玄関で出迎えてくれた母の顔は、いつも変わらない優しさに満ちている。

「うん、元気だよ。ただちょっと悩んでることがあって……」

リビングのソファに座り、陽香は切り出した。仕事のこと、慶太との関係、そして真司への思い。話すうちに、胸の内にあったモヤモヤが少しずつほどけていくのを感じる。

「そうか。でも陽香、あなたはちゃんと自分の人生と向き合ってるね」

母はそう言って、陽香の手を握った。その温かさに、じんと胸が熱くなる。

「悩むってことは、それだけ真剣に生きてるってこと。陽香なりの答えが、きっと見つかるわ」

母の言葉が、心に沁みた。幼い頃から、母は陽香の味方でいてくれた。今も変わらない。

「ありがとう、お母さん」

涙を浮かべて微笑む。母も、優しい眼差しを返してくれた。

窓の外を見ると、のどかな田園風景が広がっている。みずみずしい緑、きらきら光る川の水面。故郷の景色に、陽香の心は癒やされていく。

実家を出て、一人公園のベンチに腰かけた。緑濃い木々のざわめき、小鳥のさえずり。都会では味わえない、大自然の息吹を感じる。

ここなら、自分の声に素直になれる気がした。

(私は、本当はどうしたいんだろう?)

胸に手を当て、目を閉じる。迷いを捨て、自問自答を繰り返した。

仕事は、やっぱり続けたい。いまの会社で、真司と一緒に。二人なら、もっと素晴らしいものが生み出せるはず。

けれど、慶太とは……。

想いは遠くに向かう。大学時代から付き合ってきた彼との思い出。笑顔も、喧嘩も、全部含めて大切な時間だった。

けれど、今の自分には、彼と同じ未来が描けない。

「ごめんなさい……」

つぶやいて、陽香は立ち上がった。胸が締め付けられる思いだったが、決心は揺るがない。

東京に戻った陽香を、慶太の怒りの形相が出迎えた。

「話があるって言ってたよね。何?」

単刀直入に切り出す彼に、陽香は深呼吸をした。

「私たち、別れましょう」

一瞬の静寂。慶太の表情が、怒りから驚きに変わる。

「……は?何言ってんの?」

「ごめん。でももう、一緒にいられないの」

涙を堪えながら、陽香は言葉を続ける。

「私、仕事を続けたいの。今の会社で、もっと頑張りたい。結婚はまだ考えられないの」

「仕事、仕事って……俺よりも大事なわけ?」

慶太の声が、感情に震えている。陽香も、心が引き裂かれそうだった。

「ごめんなさい……でも、私らしい人生を歩みたいの」

そう告げた陽香に、慶太は何も言わなかった。怒りと諦観が入り混じったような、複雑な表情を浮かべている。

「……勝手にしろ」

最後にそう捨て台詞を吐いて、慶太は部屋を出て行った。ドアが乱暴に閉じる音に、陽香は目を瞑った。

長い沈黙の中で、陽香はゆっくりと息をついた。胸の奥が、ズキズキと疼く。別れの痛みは、思っていたより深かった。

窓の外は、夕焼けに染まっていた。燃えるような赤が、少しずつ闇に飲み込まれていく。

陽香の恋も、今、終わりを告げた。けれど、新しい一歩を踏み出す勇気も、同時に生まれていた。

痛みを感じながらも、前を向く。夕焼けが沈み、夜の帳が下りる。

星空の下、陽香の新しい一歩が始まった。悲しみも、喜びも、全部抱きしめて。

「明日も、頑張ろう」

つぶやいて、空を見上げる。瞬く星たちが、陽香の選択を静かに見守っているようだった。



「桜井さん、新しい企画書のアイデア、まとまった?」

オフィスの一角で、真司が陽香に声をかける。慶太と別れてから数週間。陽香は、仕事に没頭する日々を送っていた。

「はい、ほぼ完成です。午後の会議までには資料を作り終えます」

「さすがだね。桜井さんと一緒に仕事ができて、本当に良かった」

笑顔で答える真司に、陽香も思わず頬が緩んだ。彼の存在が、今の自分の支えになっている。

窓の外には、青空が広がっている。まぶしい日差しが、オフィスのガラス窓を照らす。

「ねえ、井上さん。今日の午後、少し時間ありますか?」

ふと、陽香は尋ねていた。真司が首を傾げる。

「午後? 会議が終わったら、特に予定はないけど」

「じゃあ、ちょっとお話しませんか。二人で」

言葉を選ぶように告げる陽香。その頬は、かすかに紅潮していた。

午後の会議が終わり、二人は近くの公園に向かった。

輝く新緑の中、ベンチに腰かける。木漏れ日が、さらさらと肌に降り注ぐ。

「何か、重要な話でも?」

真司が不思議そうに陽香を見る。陽香は、小さく息を吸い込んだ。

「私、この前慶太君と別れたんです」

一拍の沈黙。真司の瞳が、驚きに見開かれる。

「え……そうだったんだ。辛かったね」

優しく語りかける彼の声音に、陽香の心が熱くなる。

「私、自分の人生を歩みたいって思ったんです。仕事も、恋愛も、全部含めて」

「うん。陽香らしい決断だと思う」

そう言って、真司は陽香の目をまっすぐ見つめた。驚いたことに、彼は「桜井さん」ではなく「陽香」と、呼び捨てにしたのだ。

その呼び方に、陽香の鼓動が早くなる。きっと、真司にも伝わっているはず。自分の想いが。

「私……」

言葉を探す陽香に、真司が口を開いた。

「陽香。俺も、伝えたいことがあるんだ」

真剣な眼差しに、息が止まる。

「陽香と一緒にいると、刺激をもらえる。心から、尊敬できる。だから……」

真司が、陽香の手を取った。大きくて温かい手のひらに、胸が熱くなる。

「これからも、二人で新しいことにチャレンジしていきたい。陽香の隣で」

その言葉は、告白のように響いた。

「……はい」

陽香も、真司の手を握り返す。

「私も、真司さんと一緒にいたい。ずっと」

呼び捨てで告げると、真司が驚いたように目を見開いた。でも、すぐにその顔が笑顔に変わる。

「陽香……」

見つめ合い、二人は笑った。手と手を重ね合わせ、指を絡める。

木々のざわめきが、二人を祝福するように聞こえた。頬に触れる風は、これまでになく優しい。

「よし。これから、もっとすごいこと、やってやろう」

「ええ。新しい広告、新しい自分。全部、真司さんと一緒に」

笑顔で頷き合う。これから二人で歩む未来に、希望の光が見えた気がした。

オフィスに戻ると、陽香の机の上に一通のメールが届いていた。差出人は、あの慶太だった。

「陽香へ

別れてから、ずっと考えてた。俺、陽香の気持ちを分かってあげられなかったんだ。

仕事に打ち込む陽香を、応援してあげられなかった。

俺にはまだ、自分の夢ってものがないんだと思う。だから、陽香の夢の大きさが分からなかったんだ。

ごめん。そして、これからも自分の人生、がんばって。

慶太より」

メールを読み終えた陽香の瞳に、涙が浮かんだ。慶太の優しさに、胸が熱くなる。

(ありがとう、慶太君。あなたも、自分の夢を見つけてね)

心の中で手を合わせ、陽香は顔を上げた。

窓の外は、オレンジ色に染まり始めていた。夕焼けの中、新しい一日が終わろうとしている。

そして、また新しい一日が始まる。

陽香は立ち上がり、夕焼けを見つめた。

これから先も、悩むことはきっとある。でも、もう怖くない。

仕事も、恋も、自分らしく生きていけばいい。

「さあ、明日も頑張ろう」

つぶやいて、陽香は真司のもとへ歩き出した。夕焼けのオレンジが、二人を優しく包み込むように輝いていた。



「本当に、この場所を選んでよかったと思う」

真司のつぶやきに、陽香も深く頷いた。

二人で訪れたのは、都心から少し離れた小さな町。緑が多く、ゆったりとした時間が流れる場所だ。

「こういう環境で育ったら、また違う発想が生まれそうだね」

「そうね。東京にはない、原風景みたいなものを感じる」

見上げれば、青空が広がっている。時折吹く風が、頬を心地よく撫でていく。

二人は今日、ある決断をしようとしていた。それは──。

「あ、あそこだ」

真司が指差した先に、小さな建物が見えた。古めかしいが、趣のある佇まい。その建物の前に、不動産屋の男性が立っている。

「お二人が、桜井さんと井上さんですね。物件の説明ですが……」

そう、二人が決断したのは、新しい広告代理店を独立すること。そして、この町にオフィスを構えることだった。

東京での経験を活かしつつ、新しい環境で新しいことにチャレンジする。それが、二人の選んだ道。

「ここ、いいと思うよ」

建物の中を見学しながら、陽香がつぶやく。

古い建具、年月を感じさせる床。けれど、その風合いが新しいアイデアを呼び起こしそうだ。

「俺も賛成。ここから、また新しい一歩を踏み出そう」

真司も力強く頷いた。不動産屋の男性に向かい、にこやかに告げる。

「ここに決めました。契約、よろしくお願いします」

握手を交わし、晴れやかな表情を浮かべる二人。

新天地での第一歩は、こうして始まった。

オフィスの準備を進める日々。慣れない土地での暮らしは、戸惑うこともある。

けれど、二人で力を合わせればきっと乗り越えられる。陽香はそう信じていた。

「陽香、これどう思う?」

真司が、PCの画面を指差す。新しい広告の企画書だ。真司のアイデアに、陽香は目を輝かせた。

「すごく良いと思う。この方向性で、もっと膨らませていきましょう」

二人でアイデアを出し合い、企画書を完成させる。刺激し合い、高め合う日々は、かけがえのないものだった。

「よし、今日はここまでにしよう。お疲れさま」

そう言って、真司が陽香の肩に手を回した。頬を寄せ合い、笑顔を交わす。

「ねえ、今日は少し早めに上がって、夕日でも見に行かない?」

「いいね。町外れの丘、景色が良さそうだし」

手を繋ぎ、二人はオフィスを後にした。

町外れの丘に着くと、すでに夕焼けが広がっていた。

「わあ、綺麗……」

思わず息を呑む陽香。オレンジ色の空が、地平線の彼方まで続いている。

「ここに来ると、自分がすごく小さな存在だって実感するよね」

「そうね。だけど、その小ささを感じることができるのは、生きているから」

言葉を交わしながら、二人は夕日に見入った。

「陽香、俺はずっと陽香と一緒にいたい」

ふいに、真司が真剣な眼差しを向けてきた。

「これからも、苦しいこともあるかもしれない。それでも、陽香と一緒ならきっと乗り越えられる」

真司の瞳は、夕日を反射してキラキラと輝いている。

「私も……ずっと一緒にいたい」

陽香も、真司の瞳を見つめ返す。

「真司さんと一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。これからもずっと、隣にいさせて」

誓いのように告げると、真司がぎゅっと陽香を抱きしめた。

夕焼けに照らされながら、二人は深く口づけを交わした。

風がさらさらと髪をなでる。木々のざわめきが、祝福の声のように聞こえた。

「愛してる」

ささやき合う二人。夕焼けは、やがて濃い藍色の夜空に変わっていく。

満天の星空の下、新たな一歩を踏み出す二人がいた。

手と手を繋ぎ、まっすぐ前を見据える。

苦しみも、喜びも、全部抱えて。それでも、二人なら大丈夫。

「さあ、これからだね」

「ええ。二人の夢、叶えていこう」

星明かりに照らされながら、二人は歩き出した。

希望に満ちた未来に向けて、新しい一歩を。そう、これは始まりの物語。

二人の歩む道は、険しくも美しい。だが、それは間違いなく、彼らが選んだ人生の道なのだ。

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桜舞う春に恋をして 〜彼と彼女の選択〜 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI

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