裏最終項 最後のループの先のお話。
あの後、ルーク様はわたしを抱きしめてくれた。
ずっとずっと。
わたしが泣き止むまで。
法王のことなんて、どうでもいいみたいだった。
そしてわたしは、またメイドとしてルーク様のお屋敷で働いている。
ルーク様は優しい。
でも、まだ男の人が怖くて。
法王に刻み込まれたあの恐怖が忘れられない。
ルーク様に触れられると、無意識にビクッとしてしまう。……ごめんなさい。
だから、いつか克服したくて。
毎朝、ハグをさせてもらっている。
それ以外は平和。
わたしはいま、幸せです。
そうそう。
変化があったの。
あのカラスが何故かいつも、お屋敷にいる。
ルーク様も動物には優しくて、追い出せないみたい。
そして、もっとの変化。
このカラスね(リー子と命名)。
わたししかいない時に話すんだよ。
やれ、クズが多い街はどこだとか。
やれ、ルークとはどこまで進んだかとか。
お姑さんみたい。
リリスも暇なのかな。
あっ。そういえば、わたしもリリスに聞きたいことがあったんだ。
「あのループの時、ルーク様にキスしたり、愛がなんとかとか。勝手に指示にないアレンジされたんだけど……?」
「…………」
「ねぇ。どういうこと?」
「そんなことあったカァ?? ループしちゃったから、覚えてないカァ」
うそだ。この口ぶりは絶対に覚えている。
神話とかだと、血縁でも普通に恋したり子供が産まれているし。悪魔の感覚もどんなか分かったもんじゃない。
こいつ……。
実は、恋でも要注意人物か?
それと、ルーク様の手の甲に勇者様の紋章があらわれた。これで、みんなに胸を張って言えるね。
わたしは知ってるよ。
ルーク様が、みんなに勇者って自慢しても信じてもらえなくて、いじけてるのを。
そんなこんなで、あれから2度めの冬がきた。
わたしとルーク様は、ふふっ。
いわゆる、ラブラブだ。
それとね。
また一緒に寝れるようになったよ。
そんなある日、暖炉で寛いでいると、リー子が突然叫んだの。
わたしには、いつもの事だったけれど、ルーク様は驚いたみたい。目をまんまるにして、オヤツを床に落としてた。
リー子は言ったの。
「ルーク!! メイ子!! おもしれーことが起こったぞ。あのノアとかイヴっていったっけ。あの神官たち。異世界の魔王と戦って死にかけてっぞ。いや、もうすぐ確実に死ぬね。おもしろそーだからよ。お前らまざってこいよ」
話が終わるや否や、ルーク様は立ち上がった。
「メイ。わりいな。俺、あいつらを助けてくるわ。お前も力を貸してくれないか?」
貴方は本当に変わった。
友人のために、迷いなく立ち上がれる貴方。
わたしは答えた。
「……はい。るーくさま」
すぐにクローゼットにいき、装備を整える。すると、ルーク様はバツが悪そうに頭を掻いた。
「悪いな。平穏な生活、2年しかさせられなかった。でもな、アイツらには恩義があるんだよ。もし、俺が死んでも、お前は生き残れよな」
わたしは答えた。
「はい」
すると、ルーク様は狼狽えた。
「ちょっと。少しくらいは迷ってくれよ」
迷うわけないじゃない。
わたしは知ってるんだ。
あなたの首の後ろに悪魔王の紋章が浮かんでいることを。しかも、上下に2つもね。
リリスは、ちゃんとわたしの2つ目の願いも聞き届けてくれたみたい。
神にも悪魔にも寵愛を受けているんだよ?
貴方を殺せる人なんて、この世にいるハズがないじゃない。
貴方は強くて優しくて。
もう、わたしが貴方の楔(くさび)になる必要はない。
でもね。いまは。
貴方がわたしを繋ぎ止める楔になっているの。
だから、ずっと手を離さないでね。
うふふ。
大好き。わたしの勇者様。
(おわり)
※ご愛読ありがとうございました。
途中でエタりかけてしまいましたが、無事に完結できてよかったです。
面白いと思ってもらえたら、評価いただけると嬉しいです!!
では、また別の作品で。
以下はオマケです。
お時間があったら、覗いてみてください。
【ご挨拶】
https://kakuyomu.jp/users/omochi1111/news/16818093089300969411
純潔メイドのワタクシは3度目のループで恋をした。 おもち @omochi1111
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