第4話 聴取

「はっ。」

私は目を開いた。

「起きたぞ。」

白く染まった髪の医師が傍らにいる。

「君、大丈夫かい。何かの事件に巻き込まれたのかなぁ。」

半分、独り言のように医師が話す。

「まぁ、少し待っていなさい。警察の人たちがくるから。

ーそれはまずい。ー

私はそう思ったが、言おうと思った時には、医師は病院のどこかに消えていた。


「今回の事件を担当します井上です。」

「同じく佐藤です。」

私はうなずいた。

「ファヒーメです。日本語はしっかり学んできたので、日本語で大丈夫です。」

注釈を入れておくと、この国では海外出身者が全居住者の6割を超えている。ただ、日本語を事実上の公用語ではなく、正式に公用語としたため、日本語は廃れていない。

「分かりました。では、次にお尋ねしたいのが、なぜあの廃ビルにいらっしゃったのかということです。」

私は口をつぐんだ。

「お答えしてくれませんか。」

「どうしましょうか。」

佐藤が言った。

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苔に住む生き物 @UminoMiyako

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