第3話 イランの女性

ナユタは、今回の調査との関連も考え、廃ビルの3階に向かった。

廃ビルの3階に着くと、そこは爆発の跡らしくところどころが黒く焦げていた。

「うぅ。」

うめき声がする。

「大丈夫ですか。」

駆け寄ってみた。

どうやら、うめき声の発声源は、数列のデスクを左に行ったところにあるらしい。

うめき声を出す人にそっと近寄ってみると、十六~七の若い女性がいた。

「大丈夫ですか。」

そっと手を出す仕草をしていたため、私は彼女を起こした。

「大丈夫です。ありがとうございます。」

「いえいえ、うん?」

発見時には気付かなかったものの、彼女からは左手の指が2~3本飛び、今も血が滴っている。あとは、顔の左に火傷を負っている。

「救急車を呼びましょうか。」

私が携帯を取り出そうとすると、いきなり私の動きを手で制止した。

「どうしました?」

「救急車は呼ばなくて結構。救急隊員の人たちは忙しいから。」

私は彼女の手を振りほどいた。

「しかし、貴方の火傷は重そうだ。それに指が3本もなくなっている。」

「でも、呼ばなくて大丈夫。」

「あの、そんなに一点張りされても困ります。第一、こんなひと気の無い通りのこんなひと気の無い廃ビルの3階にいる貴方の状況は極めて不審だ。わたしは貴方を助けたい。だから、救急車を呼ぶ。」

「うぅ。」

彼女は、うめき声をあげながら再び倒れた。

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