お試し版②

「みこにぃ久しぶり、七年間ずっとずっとずーっと会いたかった」


「久しぶりだね」


「久しぶりなのはそうだけど、どうして私があんたと一緒に住まないといけないのよ!?」


「…………ひ…さし…ぶ…り」


数年ぶりに会った幼馴染三姉妹はすぐには声が出ないくらい、彼女達の姿が目から離れないほど綺麗で可愛くなっていた。


***


「あんた、来週引っ越すんだよー! 荷物の準備はできてるのー!?」


「まだやから、今から準備しますよー!」


一階から家全体に響き渡る声で母さんが叫んでくる。それに対抗せんとばかりに声を大きくして返事をする。

3ヶ月前、高校進学を機に上京する事を決めていた僕は東京で住む部屋を探している所に、幸運にもある一本の電話が入った。


『え!? 沙世利すせりさん!? そんな!? ほ、本当に良いんですか!?』


『………もう夜だよ、母さん。もう少しボリューム下げて』


もう夜の11時近いのだが一階で大声を出しながら誰かと話す母さんに少し声量を下げるよう注意をしようと自分の部屋から階段を降りた所だった。


『あんた、沙世利さん覚えてるよな?』


『え? 隣に住んでた、三姉妹の……』


その名前には聞き覚えがあり、忘れる事もない名前だった。


『そう、その沙世利さんや』


『で、それがどうかしたの?』


『東京で一緒に住んでいいって……』


『へ? はい?』


沙世利さん家族は数年前まで隣に住んでいて、自分が生まれてから引っ越すまでの間、沙世利さん家の三姉妹とは随分仲良くさせてもらった記憶がある。

おじさんとおばさんは今は海外で働いているらしいが、三姉妹は日本に残ったそうで、一度引っ越した東京で住んでいるらしい。

そこに自分も住んでも良いとのことだった。

大丈夫なのか? というのが第一に頭に思い浮かんだ言葉だった。

来年の僕は基本的にエッチな事にしか興味がないお年頃の男子高校生である。

自分と同じくらいの年齢の人と一緒に住む、まして同居相手は三姉妹である、何かあってからは遅いのではないのだろうかと思ったのだが、そこは長年の付き合いという事で信頼されているらしい。むしろ僕なら大歓迎とのことだそうだ。

両親は東京の家賃に頭を悩ます予定だったので、そこに舞い込んできたこの話が嬉しくないわけがなかった。そこから話はトントン拍子で進み、三姉妹からの許可も出たとの事で、僕は高校進学と上京、そして数年前の幼馴染三姉妹との同居生活が始まる事になった。



***



「やっと着いた……。まだ最寄り駅だけど……」


新幹線で京都から東京まで、そこから一体どこに繋がっているのか分からないくらいの路線図と睨めっこしながら、何とか乗り継ぎをして最寄り駅まで着く事ができた。

そこから徒歩数分圏内の場所に家はあるらしい。

スマホのマップアプリに従いながら道を歩く。

教えられた通りほんの数分歩くと一度写真で教えられていた家の特徴と一致する家が見えた。表札にも【沙世利すせり】の文字が書いてあるので、この家で間違いないだろう。

何かの間違いでこの家ではない可能性も考えながら、恐る恐るインターホンを鳴らす。

ピンポーンと音を発し、待つ事数秒、インターホンのカメラからこちらを確認したのか、家の中からドタドタと足音が聞こえてくる。

ガチャンと鍵が開いた音がすると、玄関のドアが開いた。

玄関には三姉妹が出迎えてくれた。


「みこにぃ久しぶり、七年間ずっとずっとずーっと会いたかった」


「久しぶりだね」


「久しぶりなのはそうだけど、どうして私があんたと一緒に住まないといけないのよ!?」


「…………ひ…さし…ぶ…り」


どこか見覚えはありつつも、昔の記憶よりも数倍…数十倍…いや、何倍かでは表せないくらい、見違えるほど、見惚れるほど、綺麗に可愛くなっていた。


「とりあえず、上がって。京都からこの家まで長かったでしょ?」


そして僕はこれからお世話になる家に足を踏み入れた。



***



3人に導かれ、リビングに入る前に階段を登る。

二階には部屋が四つあり、それぞれのドアに名前の書かれた看板が吊り下げられている。

奥から三番目、階段に一番近いドアには僕の名前『みこと』と書かれた看板が吊り下げられていた。その看板通りそのドアを開けると、綺麗に整頓された部屋があった。


「今日からこの部屋を使って。元はだけど、ずっと綺麗にしてたから、安心して。とりあえず送られてきた荷物は置いてあるから、荷解きする時は言ってね。私も手伝うから。で、今からこの家のルームツアーを開催するからついて来て」


これから過ごす自分の部屋の説明がすぐに終わり、どうやらルームツアーが開催されるらしい。ちなみにさっきから色々と説明してくれるのは、三姉妹の三女の沙世利すせり仁結みゆだ。来年度中学三年生になる14歳だ。七年前から僕の事をみこにぃと呼び、距離も一番近い。一人っ子だった僕が唯一兄面が出来た妹みたいな存在である。また三姉妹の末っ子だった仁結には新鮮な、兄みたいな存在だったと自負していた。


「それじゃあ隣の部屋から」


奥から二番目の部屋には『にあ』と可愛らしくデコレーションがされている看板が吊り下げられていた。

仁結がドアノブに手をかけようとすると。


「ちょ! ちょっと! 中まで見せるの!?」


と、三姉妹の次女、沙世利 仁愛にあが慌てて仁結の手を押さえた。

仁愛は今年大学受験を控えている17歳だ。僕より二歳年上で、七年前は末っ子よりもいじめやすい奴だったのだろう。仁愛にはあまり良い思い出は残っていない。

だけど、七年も昔の事、ほとんど何をやられたかなんて忘れているので全くと言って良いほど気にしていない。


「別に隠すものなんてないでしょ」


「私にだって見られたくない物はあるの!!!」


「家族なんだから別に良いでしょ?」


弥士みことだっているのよ!?」


「それはみこにぃは家族じゃないって事?」


家族じゃないでしょ!? 恥ずかしいの!!!」


「まぁまぁ、仁愛にも秘密の一つぐらいあるんだから、やめておきな」


と、姉妹の仲裁に入ったのは三姉妹の長女、沙世利 仁美ひとみだった。

今年大学二年生になる19歳。僕とは当たり前だが一番歳が離れていて、七年前は他の姉妹と同様によく面倒を見てもらった記憶がある。もちろん三姉妹のまとめ役である。


「………じゃあ、次」


仁結が少し不貞腐れ気味に次の部屋に移った。


「ここが、ひとねぇの部屋。開けるね」


遂に本人に許可すら取らず、仁結は部屋のドアを開けてしまった。

ひとねぇの部屋は階段から一番離れていて、一番奥の部屋である。

そして、ドアを開けて広がっていたのは………


「ちょ、ちょっと汚いけど。こんな感じ………」


少し照れくさそうに、ひとねぇが部屋を見せる。

そこにはちょっとでは片付けられないくらいに物が転がっていて、足の踏み場も数えるほどしかない、いわゆる汚部屋おへやだった。


「先月掃除したのに、もうこんなに汚くなったの!?」


「だって………気づいたら………」


仁愛が呆れた目を向ける。

それからバツが悪そうにひとねぇは目を逸らし、吹っ切れたように言う。


「も、もう、私の部屋はいいから! 次! 仁結の部屋!」


仁結が僕の部屋の奥を指差して言う。


「あれが私の部屋。はいルームツアー終わり」


「え!?」 「は!?」


「ちょっとそれはズルいんじゃないの、仁結?」


「わ、私は部屋の中まで見せたんだよ………?」


何やら不穏な空気が漂い始めたこの空間から少し逃げ出したい気分だが、逃げる場所などない。どうなってしまうのかと思っていると、仁結が口を開く。


「入っていいのは、みこにぃだけ。なるべくひとねぇと仁愛ねぇが寝た後に」


「あんた、みことに何すんのよ!?」


「家でヘンな事はあんまりしないでよ。あと、仁結は自分がまだ14歳って事忘れないでね」


仁結が二人から注意を受けるが、少し反抗期に入り始めているのだろうか、聞こえてないふりをして僕の腕にくっついて来た。


「一応、これが二階の部屋について。今日から三年と言わず、一生よろしくね」


「三年間もあんたと一緒なんて耐えられる気がしないわ!」


「私達三姉妹が迷惑かけることもあるだろうけど、三年間よろしく」


この家に来てからまだ数十分しか経ってないが、三姉妹と自分の距離が七年ぶりの再会とはいえ、あまりにも近すぎる事に少しでも違和感を持つべきだった………




これはお試し版②です!

①と②のどちらかを正式な一話として再度別で投稿したいと思っています!

①の方が好き、②の方がいい、などコメントで分かりやすく書いてくださると分かりやすいのでどうかコメントお願いします!

これ以降は本格的に投稿を始めるまでは更新はしません。

それだけはご注意お願いします。

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久しぶりに再会した幼馴染3姉妹がそれぞれ違ったデレかたをしてくるんですが? マキマキ(更新停止中) @makimaki0318

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