8品目 ヨーグルトケーキ
カッと太陽の光が眩しい。
日本の梅雨はどこに行った?
小学四年生の
こんな時間に下校なんて、アスファルトの上で干乾びるミミズの気持ちも分かろうと言うものだ。
水筒の麦茶をごくごくと飲んで、望果は「あっちぃー」とぼやく友達の
「暑いけど、今日はどうする?」
「遊ぶに決まってんじゃん!」
「やっぱりー?」
二人は顔を見合わせて笑う。
外が暑いのはイヤだけど、水曜日に公園で遊ぶのは別だ。
公園の遊具が触ると火傷する程になったら考えようかな。
大翔と別れた望果は、家に向かって走りながら、今日のおやつに思いを馳せる。
これだけ暑いのだから、母さんは焼き立てアツアツのものは用意しないだろう。
冷たくてツルンと食べられるものは魅力的だけど、暑さに負けずに遊ぶ為には、それなりにお腹に溜まるものがいい。
パワーチャージ出来ていないと、すぐにバテちゃうからね!
「お母さん、今日のおやつは!?」
しまった!
そんなことを考えていたら、思わず「ただいま」より先にこの言葉が出てしまったぁ!
「ただいま! お母さん、ただいま!!」
「おかえり〜。今日はセーフと言ってあげるべきかしら?」
「あげるべき、あげるべき!」
「も〜」
母さんは腰に両手をやって呆れて見せたけれど、すぐに笑って言った。
「今日はヨーグルトケーキがあるわよ」
「やった!」
望果は急いで荷物を二階の部屋に押し込み、手洗いうがいを終えて居間に滑り込んだ。
早く冷たくて美味しいヨーグルトケーキが食べたい!
テーブルの上には、三角のカットケーキが小皿に乗せられて、望果が戻るのを待っていた。
「いただきます!」
両手を合わせてそう言うと、早速フォークを持ってケーキに向かう。
シンプルなクリーム色のケーキは、見た目はまるでNYチーズケーキ。
しかし、三角の先にフォークを刺せば、わずかに押し返すような弾力がある。
大きく切り取り、パクリ。
口に含むとムチッとして、噛めば柔らかくほぐれるその感じは、クラフティ(※)に近いだろうか。
クラフティと違ってフルーツが入っていない分、よりムチムチした食感が強い気がする。
初めて食べた時、望果はういろうを思い出したくらいだ。
この食感になるのは、ヨーグルトの水切りをしないから。
シンプルに、ヨーグルトをそのままと、砂糖、卵、ホットケーキミックスを混ぜて焼くだけ。
お菓子作りにヨーグルトを使う時は、水切りをして水分を減らすことが多い。
そうすることでクリー厶チーズの代用のようにも使えて、ヘルシーなチーズケーキが作れちゃったりするのだ。
しかーし!
ヨーグルトはヨーグルトとして使わなければ、ヨーグルトが可哀想ではないか!
だってヨーグルトは単品でこんなに美味しいのに、何かの代用にしちゃうなんて勿体なくない!?
鼻息を荒くして、望果は大きくもう一口。
シンプルにヨーグルトの味がする、あっさりとしたこのケーキ。
そのまま食べてもおいしいが、上にジャムを乗せると、これまた絶品だ。
今日はブルーベリージャム。
大きなスプーンでひと掬いしたジャムを、望果は表面に塗り広げてから、丁寧に切り取って、一口。
ジャムの甘さと、フルーツの風味がケーキと上手いこと混ざり合って、う〜ん、ワンランクアップ!
このケーキは乗せるジャムを選ばない。
どんなジャムでも相性が良いのは、ヨーグルトベースだから当然だろう。
やっぱりヨーグルトって、すごいポテンシャルを持ってるよね!
……って、母さんが言ってたけど、ポテンシャルって、なんだろな?
「何か難しいこと考えてる?」
「えへへ、べつに」
母さんが笑いながら渡してくれたのは、グラスにストローを差したリンゴジュース。
もちろん果汁100%だ。
ヨーグルトケーキにはどのフルーツジュースでも合うと思うけど、ケーキにジャムを乗せるなら、スッキリとしたリンゴジュースが一番だと望果は思う。
乗せないのなら、濃いめのミックスジュースなんかもいい。
最後の一口分を口に運び、皿に溢れたジャムを丁寧にフォークで掬い取る。
ジャムと共にズズズッとストローでジュースを飲み干したら、しっかりお腹に収まって、エネルギーチャージは完了だ!
「ごちそうさまでした」
望果は両手を合わせてから、立ち上がる。
食べ応えもあって、ヨーグルトの風味で爽やかさ増し増し。
よーし、元気出てきたー!
暑さなんかに負けないぞー!
※ クラフティ。
浅い器に果物を敷き詰め、液体のクレープ生地を流してオーブンで焼いたもの。
熱くても冷たくても美味しい!
近況ノートにレシピを載せてみました。
興味のある方はご覧下さいませ。
https://kakuyomu.jp/users/karamitu/news/16818093080632904846
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