第11話 BADEND

「お願いっ、なんでもするからアタシのこと許してっ」

「ん? なんでもしてくれるの?」

「は、はいっ! なんでもしますっ!」

「本当になんでもしてくれるんだな?」

「はいっ!」

「なら全裸になれ」


 お兄ちゃんの命令に思わず「え?」と間抜けな声を漏らしてしまう。

 ぜ、全裸?

 お兄ちゃん、何言ってんの?


「おい、何してる? なんでもしてくれるんだろ?」

「は、はいっ、なんでもしますっ……」

「なら全裸になれっ。ほら早くしろっ」

「わ、わかりましたっ……」


 アタシは慌てて服を脱ぎ始める。

 

「下着も脱がないとだめだよね?」

「当たり前だ。ほら早くしろ」

「は、はいっ……」


 下着も脱ぎ捨てて、全裸になった。

 は、恥ずかしいっ……。

 けどこれでお兄ちゃんも許してくれるよね?


「1000回だ」

「え?」

「全裸で1000回スクワットしろ」

「ど、どういうこと?」


 アタシの言葉に、お兄ちゃんは「ちっ……」と舌打ちする。


「何をもたもたしてるっ! 早く全裸でスクワット1000回しろっ!!」

「せ、1000回なんて無理だよっ……そんなのできないっ」

「は? お前なんでもするって言ったよな? なら1000回スクワットしろよ。なにやる前から諦めてんだよっ。ほらさっさとしろっ」

「は、はいっ……」


 お兄ちゃんの命令に従い、全裸でスクワットを始める。

 全裸でスクワットをするのは、アタシの想像以上に恥ずかしかった。

 もう嫌だよっ……。

 こんなの恥ずかしいよっ。


 スクワットの回数が増える度に、じわじわと足に痛みが蓄積される。

 もうダメっ……。

 1000回もスクワットなんかできないっ。

 恥ずかしいし、辛いよっ。

 アタシはスクワットを中断して、お兄ちゃんに反論する。


「スクワット1000回は流石に無理だよっ……」

「は? 何いってんだよ、お前。なんでもするって言ったよな?」

「そ、それは……」

「なぁ言ったよな? 俺になんでもするって言ったよな?」

「は、はい……言いました」

「なのに、なんでスクワット中断してるんだよ? まだ1000回達成してないぞ?」

「だから1000回もスクワットなんかできないよっ……」

「できないじゃねぇよっ。やるんだよ。なんでもするって言ったんだから、文句言わずに俺の命令に従え。ほら早くしろ」

「イヤだっ、そんなの無理っ……」

「お前、また俺に嘘つくのか? さっきなんでもするって言ったのに、また俺に嘘つくのか? なぁおいっ」

「ご、ごめん……けど流石に1000回は」

「言い訳なんか聞きたくねぇよっ。このカス野郎がっ。お前みたいなクズはこの世にいらねぇな。俺が処分してやるっ」

「え? どういうっ……っ!?」


 突如、顔面に痛みが走る。

 お兄ちゃんがアタシの顔面を殴ったのだ。

 

 痛いっ、痛いっ、痛いっ、痛いっ。


 強烈な痛みに、ボロボロと涙が溢れ出す。


「なんでアタシのこと殴るの!? どうしてそんな酷い事するの!?」

「黙れっ、このカス野郎が! お前みたいなカス野郎は死ねッ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 再びお兄ちゃんがアタシの顔面を殴ってきた。

 何度もアタシの顔面を殴ってくる。

 アタシが「お願いだからやめてッ!!」と訴えても、お兄ちゃんは殴り続ける。 

 楽しそうに、アタシの顔面を殴ってくる。

 

「酷いッ!! 酷いよっ!! どうしてそんな事するの!?」

「酷い? 俺が酷いだと? 先に酷いことしたのはお前だろっ! お前が先に浮気したんだろ!?」

「浮気しただけで、普通こんなことしないよっ!! 今日のお兄ちゃん頭おかしいよっ!!」

「黙れ、このカス野郎がっ!!」

「あぁぁぁぁっ!!」


 再びお兄ちゃんがアタシの顔面を殴ってきた。

 い、痛いっ……。

 痛いよっ……。

 どうしてこんな酷いことするのっ……。

 いくらなんでも酷すぎるよっ。


 アタシはお兄ちゃんを睨みつける。


「最低ッ!! 女の子に暴力振るなんてクズだよっ!!  お兄ちゃんがクズだからアタシ浮気したんだよっ!!」

「……」

「そうだよっ、全部お兄ちゃんが悪いんだよっ。お兄ちゃんがクズだからアタシ浮気しちゃったんだよ。ほら、反省しなよ。全部お兄ちゃんが悪いんだよ。ちゃんと反省しないとダメだよ」


 アタシ、何言ってるんだろう……。

 なんでお兄ちゃんのせいにしてるんだろう。

 全部、悪いのはアタシなのに。

 

 アタシの支離滅裂な発言を無視して、お兄ちゃんは口を開いた。


「お前、今さっき『女の子に暴力を振るヤツはクズ』だと言ったよな?」

「そうだよっ、女の子に暴力振るヤツは最低だよっ!!」

「女の子に暴力を振るのは最低? なんだその言い方は? なんで女の子に限定しているんだ? まるで女の子に暴力振るのはダメだけど、男の子は殴っていいよって言っているように聞こえるぞ?」

「そ、そんなつもりで言ったわけじゃ……」


 アタシの言葉を無視して、お兄ちゃんは話を続ける。


「俺はな、デートで男性が奢るのは当たり前とか、女の子を殴っちゃダメだよとか、男のくせに泣くな、とか平気で言う女が大嫌いだっ。優奈……お前もそういうタイプの人間だったんだな」

「……」

「言っておくが、俺は平気で女を殴るぞ。男も女も平等に見ているからな。これこそ、真の正義だと思うんだけど、お前はどう思う?」

「最低だよっ……女の子に手出すなんて人間のすることじゃないっ!」

「女の子に手を出すのは人間じゃない、か……。俺、さっき言ったよな? 平気でそういう発言をする人間が大嫌いなんだよ。死ねッ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 アタシの顔面に蹴りを入れてきた。

 尋常じゃない痛みに、失禁してしまう。 

 床に黄色い液体が瀰漫する。


 殺されるっ。

 このままじゃお兄ちゃんに殺される。

 イヤだっ、こんなところで死にたくないよっ……。

 まだしたいことたくさんあるのにっ。

 

 浮気なんかしなかったらよかった。

 浮気しなかったら、こんなことならなかったのに……。

 そもそも、特定の人と付き合わなかったらよかった。

 誰かと付き合うからこんな悲劇が起こるんだ。

 アタシは何も悪くないっ。

 全部恋愛が悪いっ。

 恋愛したせいでこんなことになったんだっ。

 恋愛のせいでアタシの人生むちゃくちゃになったんだ。

 

「あ、アタシを殺す気なの……?」

「ああ、殺すよ。お前みたいな人間はこの世界に不必要だからな」

「い、嫌だっ!! 死にたくないッ!! こんなところで死にたくないよっ!!」

「……」

「ねぇお願いッ!! お願いだからアタシのこと許してっ!! アタシのこと殺さないでっ!!」

「ダメだ、お前みたいなカスは死ね」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」


 

 






















































 BADEND


 

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大好きな妹に浮気されたので、無敵の人になります。 理亜 @ria012345

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