三不粘

めいき~

三不粘(さんぷーちゃん)

友達に、三不粘を食べてみたいと相談された。


「あれは洒落にならない位手間がかかって、慣れてる料理人でさえ腕が引きちぎれるような筋肉痛になる代物だぞ。第一技術の集大成みたいなもので、なかなか完品で作れる料理人はいない」


自転車でただ真っすぐな道を、ただ愚直に漕ぎ続ける様に。

中華鍋の上で、回しながらお玉で中華鍋の底を叩き続ける。調理法はただそれだけだ。


鍋を回し続け、お玉で叩き続け。全神経を鍋に注ぎ込んで作る。


そのただそれだけを繰り返し続け、その口当たりに。その形状に作る事が死ぬほど難易度が高いだけ。



そもそも、鍋とお玉だけで滑らかにしなくてはならない。


技術だけで、箸につかない程の柔らかさと掴めるギリギリの柔らかさ。

そういうものを作れないのなら、お店では出せないのだ。


その名の通り、歯にも皿にも箸にもつかない。


作れる料理人が、一皿作ってその日の調理をおしまいにするような。

雄弁に、料理人の魂を語る。


飾りなく、余計なものもなく。

黄色い物体が、皿の上に一つ。



(言葉はいらない)



一口で、その技術の全てを語る。

そういう、菓子。


それを、普通の店で食べられる訳が無い。漫画や動画で知った所で、それを出してくれるようなところは敷居が高いのだ。


「無理じゃないかな、新規の客を受けてくれる所でそれを出せる店はなかなかない」由里は、恐らく何かで見たのだろう。でも、それを扱っている所は本当にない。デジタル時代の弊害、知らないものを見れば食べたくなるし知りたくもなるだろう。でも、本場でさえ数店舗も無かったはずだ。それを、取り扱う店自体がない。


だから、彼女に言った。


「少なくとも、コンビニやファミレスでは扱ってなかったはず。だから、もし食べたいのなら予約しないとダメだけど。順番待ちが長すぎて、予約も受けてくれないんじゃないかな」


「そんなぁ~、そこを何とかできない?」


そんな、無茶な注文されても困ってしまう。


「諦めて、適当な店で和菓子でも頼もう?」

「最近、和菓子の店も減ったよね」「洋菓子の店もな」



昼下がりの午後、二人は一緒になって菓子の店を検索する。


ただ、検索しても存在していてもそれが手に届かないという事は往々にしてあるもの。




(おしまい)


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※どうでもいい話


御菓子のさんぷーちゃんは、材料こそ卵黄、砂糖、ラード、でんぷんだけのシンプルなモノですが調理難易度が頭おかしくなるほど高く手間もあほ程かかるので本場でさえめったに作る料理人がいないという。(誰も作ろうと思わない程手間がかかる)もし興味がある人は漫画には出たことがあるので検索してみてください。

これを出す店は殆ど無いと思います。(あっても予約制とか)



今回の#60のお題「自転車」「相談」「言葉」

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三不粘 めいき~ @meikjy

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