第一話 異世界

拝啓

お父さん、お母さん


ハジメです。


神を自称する爺さんから転生者の恩恵を天に返すという神命を受け異世界へとやってきたのですが……降り立った場所が悪かった様で魔物達に捕まってしまいました。


僕は今現在進行形で馬に繋がれ引きずられています。


ジジイに与えられた能力は魔物相手には全く効果を発揮しないので正直もうダメかもしれません。



「ニンゲン!!マチデウロウ!!」

「ニンゲン!!!!バラシチマオウ」

「ニンゲン!!クッチマオウ」




空は今日も綺麗です。



なろう滅却  完



「待て!!そこの小鬼ゴブリン達!」



突然聞こえてきた凛々しそうな女性の声に馬と小鬼達は止まって俺は胸が高鳴る


キタキタキタ!!!異世界イベント待ってましたよ!!全く遅かったじゃないか〜このまま擦り切れてもみじおろしになっちゃうかと思った



聞こえてきた声の方向を向くと大柄で鎧を着た赤毛のオオカミの様な獣人がゴブリンに近づいて来ているのが見えた。


「ナニヨウダ!!ジュウジン!!」

「コイツハオレノエモノ!!!!」

「チガウ!!!オレノダ!!!!!!」


ハハッ!!小鬼達め今にも内輪揉めが始まりそうな雰囲気だが残念だったな!!展開的にこの獣人様はオレを救い出す為に声をかけたに違いない



「私が言い値で買い取ろう!!今日は人間の肉が食いたい気分なんでな!!」


「ワカッタ!!オマエニウル」





  終


制作・著作

━━━━━

カクヨム





小鬼達はゴネる事無く二つ返事で承諾し、商談は成立。

俺は手足を縛られたままその獣人に俵の様に担がれ、獣人は俺を担いだまま代金を支払って小鬼達の元を去った。



「あの……獣人の方?……せめて苦しまない様にしてくださいね?」


「あぁ!!わかっている!!オオカミは丸呑みが基本だからな!」



それってかなり苦しむのでは?……しかしどうやら本当に食べるつもりらしい……まぁ小鬼達に食い散らかされるよりこの人女獣人に食われた方が幾分かマシか……俺ケモナーでもあるしな。





んなわけねぇだろッ!!!何納得しようとしているんだッ!!!!


ケモナーだとしても丸飲みフェチボラレフィリアの癖までは持ち合わせてねぇよ!!!!


ただこの人めちゃくちゃ力強いし、抱えられてるし、逃げる隙が全く無いぃぃ……ヤダァ……死にたくないぃ……


死にたくないんだぁあああ!!


俺は渾身の力を振り絞って縛られた腕と足を振って暴れた。


「ちょっ!!暴れるな人間ッ!!静かに!!」


「カマキリのオスなら好きなメスに喜んで喰われるんだろうが生憎俺は人間なんでね!!最後まで生き汚く抵抗するで!!!手足で!!!!」


そうだ。二度目の人生はこの世界が無くならない程度に緩く神命をこなしつつ穏やかな生を全うするってそう決めたじゃないか!!


「僕は死ねましぇ……カッ!!」


そう大声で吐こうとした時、スッと喉元を獣人の大きな手に掴まれ声は出口を失う

グググッとゆっくり力が入っていくのを感じながら目の前の景色が遠のいていくのがわかった


「許せ。」


獣人のその一言を最後に俺の意識は途絶えた。









「本日 午後12時過ぎ~~県~~市交差点でバイクを運転していた20代男性が車ではねられました。 男性は病院へ運ばれましたが意識不明の重体です」



サイレンが聞こえる……でもなんだろう……身体が全く動かない……



「ハジメぇぇぇ……」

「だめ!!起きてお兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」

「あぁあぁああぁ………」


もしかしてこれは……死んだ時の記憶か……全然思い出せなかったけどちゃんとくれてたんだな。




「そうだよお兄ちゃん。忘れてたなんて薄情だよ」



悪かったよ 何も言わずにここまで来ちまって でももう……



「まだだよ!まだ私は許さないから!!」



おいおい。これ以上どう頑張れって言うんだよ?

俺の残機はもう既に0なんだぞ?

どう考えたってゲームオーバーだ



「フフッ お兄ちゃんの残機は無限1UPしといたから大丈夫!!」



俺はカメもクリも踏んだ覚えないんだけどな。

まぁ一美かずみがそう言うんならもう少し頑張ってみっかな



「うん!応援してるね!」

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