ゲーマーの先輩は経験豊富だった!?

裏伊助

ゲーマーの先輩は経験豊富だった!?




高校2年の春


僕。南山真平は高校3年の北条花先輩に告白した。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢


「北条先輩……良かったら僕と……付き合ってください!」


「……」


無視か…。


「…だめですか…」


「…え?何か言った?」


「へ?」


「ごめんごめん、今ちょっと防具の素材集めで集中してたから聞こえてなかったよ」

振り返った先輩の手にはス○ッチがあった。


「あ…、何も聞こえてなかったんですか?」


「うん、今ちょうど倒し終わって村に戻るとこ」


「村…ですか?」


「そう、村。着いたら防具作りに行くから言いたいことあるなら早く言ってね」


「え!…あ、えーっと。僕と付き合ってください!!」


「あ、村着いた」


「え、待ってくださいよ!」


「ん?付き合うの?いいよ。えーっと鍛冶屋、鍛冶屋…」


聞いてるのか?


この人は。…ん?…今付き合うって言ってくれた?


付き合ってくれるの!?


こうして僕と北条先輩は付き合うことになった。


……本当になったのだろうか。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢



翌日の放課後


「北条先輩!」


「…」


「北条先輩?」


「ん?あ、真平くん。居たんだ」

先輩は今日もゲームをしている。校内でこんなにも堂々としていていいのだろうか。


「あの…一緒に帰りませんか?」


「帰る?拠点に、ってこと?」


「拠点?まあ拠点と言えば拠点ですけど…一緒に途中まで帰りたいなと思って…」


「んー、それぐらい一人でやりなよ」


「え、あ、はい…」

付き合ってるんだよね?これ…。カップルって一緒に帰ったりするもんじゃないの?

早くも嫌われてるのかな。


いやいや、また明日誘ってみるぞ…!



♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「北条先輩、一緒に帰りませんか…?」

ス○ッチ持つ先輩に勇気を出して誘ってみる。


「あ、真平くん。いいよ帰ろうか」


「え!いいんですか!?」


「ちょうど私も戻るとこだったんだよ」

戻る?家に戻るなんて言うかな、普通。


「戻ったらパスワード教えるから入ってきてよ」


「え?」


「え?、じゃなくてパスワード教えるから入ってきてよって」


「なんのパスワードですか…?」


「…真平くん大丈夫?頭でも打った?部屋作るから入ってきてねってこと」

怪訝な顔をして僕の顔を覘きこむ。


「え…部屋行ってもいいんですか!?…でもいきなりそんなこと。心の準備が…」

先輩いくらなんでも急すぎますよ…。


「もしかして真平くん初めてなの?」


「あ…えーっと、はい…」

先輩は初めてじゃないの!?


「仕方ないなあ、今度時間がある時にゆっくり教えてあげるよ」

小さくため息をつく。


「え!?僕そんな勇気ないです…」

先輩大胆過ぎるよ…。


「大丈夫だって、私上手いから。あ、アレはちゃんと持って来てね?無いと話しにならないし、流石の 私もそこまでは準備してあげられないから」


「…え!アレって…僕買ったことないし、買うの恥ずかしいですよ」

アレって…アレだよね…。薬局で買えるのかな。


「別に恥ずかしいことじゃないと思うけど。じゃあ明日土曜で休みだからうち来てね、場所は…ここだから。ばいばい真平くん」

先輩はLI○Eで地図を送ってくれた。


……大変なことになったぞ。


とりあえず薬局行かないと、アレっていくらくらいするんだ?

財布に2千円ちょっと入っていることを確認して学校からできるだけ離れた薬局へ向かった。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢



翌日、土曜日


僕にとって……初めての日になる。


にしてもあの北条先輩が済みだなんて…考えてもいなかったな。


ここが先輩の家か、立派な家だなあ。



―――― ピンポーン ――――


「あ、あの。南山真平と言います。北条先輩…じゃなくて花先輩はいらっしゃいますか?」



……少し間が空く。


―――― 「あ、真平くん?今開けるね」


インターホン越しに聞こえたのは先輩の声だった。


ガチャッ、玄関のドアが開く。


「いらっしゃい真平くん。時間通りだね」


「あ、はい!あの…入ってもいいんでしょうか…」

先輩の彼氏とはいえ、ご両親も居るのにずかずかと家に入るのは気が引ける。


「あー、親は出かけてるから大丈夫だよ?大きい声出しても大丈夫だよ」

ほら入ってと手招きする。


「大きい声!?…ですか?」

そんなに盛りあが…いやいや僕は無理だよ。


「え、だって白熱したら大声出るじゃん?」

もう何も言えません…。


「あ、先に上行ってて。上がってすぐ目の前の部屋が私の部屋だから。飲み物とか 持って行くよ、喉渇くしね」


「え、あ…はい」


二階に上がってすぐの部屋、階段を登り正面に扉がある。

この中が先輩の部屋…、付き合って数日の僕なんかが入ってもいいのだろうか。

もうどうにでもなれ…!


ガチャッ、……なんだこれ。


先輩の部屋は見渡す限りゲームソフトに囲まれていて正面奥にはテレビが1台とPCが2台並べてある。


「あれ、なんだ座ってていいのに」


振り向くと先輩は両手にお茶を持っていた。


「あ、ごめんなさい」


「ソファとか座布団ないからそこに座ってよ」

先輩はベッドを指さした。


えー!いきなり?いきなりなの!?


「飲む?」


「あ、ありがとうございます」

僕はお茶をもらいグっと一気に飲み込んだ。


「じゃあ早速やる?」


「え!?!」


「え、じゃないでしょ。やりに来たんでしょ?」

眉間に軽くしわを寄せ詰め寄ってきた。


「先輩、僕ほんとに初めてで…」


「だから教えるから大丈夫だってば」


隣に座って来た先輩から少し離れた。


「頼んでたやつ、ちゃんと持ってきた?」

頼んでたやつ…めちゃくちゃ恥ずかしかったけど買いに行きましたよ…。


「はい、昨日急いで買いに行きました…」


「なんだやる気満々じゃん!」

先輩はニヤっと笑顔を見せた。


「え!そんなことないです…いや、別に…」

…まあ正直買って帰る途中にいろいろと考えてしまっていた。


「これ…でいいですよね?」

薬局の袋を取り出した。


「え、薬局で売ってたの!?」


「え?あ、はい…。他に買う場所分からなくて…」


「真平くん変わってるねー。んじゃあちょっと準備しよっか」

先輩はそう言うと上着を脱ぎ始めた。


「え、ちょっと先輩!早いですよ!」


「え?だって始めると熱くならない?」


そういうものなのかもしれないけれど…。


「真平くんも脱いじゃいなよ」


「いや!大丈夫ですから!」


「そっか、今日はどこまでやる?」


「ど、ど、どこまでってどういうことですか!?」


「いや、だからさ。最初のところまでにするのか、中盤までやるのか、全部やるのか。全部やりたいなら付き合うよ?」


「え!最初ってなんですか!?全部ってなんですか!?」

もう意識が朦朧としてきた。


「まあ最後まで終わらせるって感じかな」

お、終わらせる!?


「じゃあ、もうおかませします……」


「了解、とことこんやろっか!真平くん早く出して」


「出す!?何をですか…」


「え?だって出さないと始まらないでしょ?」

こっちを向いて脚を組む。


「え、え、え!?無理無理無理ですよお!」

先輩ってこんなに積極的なの!?


「早くしてよ、手伝う?」


「や、やめてください!自分でやります!…やりま…す」


「やっとやる気になったかあ、じゃあ私も出すね」


「ちょちょ、ちょっと待って、待ってください!…無理ですよ!」


「どうしたの?真平くん。顔真っ赤だよ?」


そりゃ真っ赤にもなるでしょう。


「もしかしてやりたくなかった…?」


「え、そ、そそんなことは…」


「ならよかった!せっかく来てくれたんだしね」


「…分かりました。頑張ります…!」


「うんうん!がんばろう!……よいしょっと」

先輩は腰を上げ向こうにある棚に何かを取りに行った。


「私結構使ってるからもうガタきてるんだよねぇ、新しいの買わないと」

先輩がこっちに持って来てケースから取り出したものは













―――― ス○ッチだった。



「…ん…先輩なんですか?それ」


「え?何ってス○ッチだけど。失礼だなぁ、流石に原形はとどめてるよ」


「じゃなくて、なんで今それを持ってるんですか?」


「何言ってるの?真平くん。モン○ンやるからに決まってるじゃん」



「へ?」



「真平くん買ってきたんでしょ?まさか薬局で売ってるとは思わなかったよ。今度私も見に行こうかな」


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。今日は、あの…その…部屋に誘ってくれたってことは…」


「あー、同じ部屋で狩りに行かないと協力してあげられないでしょ?」


「え」


「やっぱり真平くん調子悪い?」


「いや調子は悪くないんですが…ちょっと頭の整理がつかなくて…」


「ふ~ん。あ、買ったス○ッチ見せてよ!薬局で買うと安いの?」


それはまずい…!だって中には…。


「だめです!ス○ッチじゃないの買って来ちゃったので!」


「えー?なんで??じゃあ一緒に狩りに行けないじゃん」


「すみません…いろいろとすみません…」

何がすみませんなんだ…。そうだ…。



「あの…、もしかしてあの日僕が告白したことも何かの勘違いしてますか?」

この先輩だ、きっと勘違いに決まってる。



「ん?あー、あれ?付き合うって話し?」


「はい、モン○ンに付き合うってことですよね…」



「……」



やっぱりそうか…、悲しいけど仕方がない。






「…本当に付き合ってるよ。こんな私に告白してくれるなんて真平くんが初めてだよ。真平くんは私の、彼氏…」

先輩は少し顔を赤らめ電源の入っていないゲームの画面を見つめた。


「…え、本当ですか?」


「……ほんとだってば!いいからス○ッチ買ってきて!」

顔をそむけたまま僕の背中を押し出した。


「あ、はい!即行買ってきます!」

僕は先輩の家を出て自転車で近くの電気屋さんへ走った。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢



数日後の放課後


「先輩!」

いつものように廊下の壁にもたれかかっている先輩が居た。


「あ、真平くん。ちょっと待ってね、今こいつ倒しちゃうから」


「そうなんですか。ちゃんと部位破壊しました??」


「右腕がまだなんだよね…」


「僕手伝いますよ!」

バッグからス○ッチを取り出す。


「…む…私が真平くんに手伝ってもらう日が来るとは。ごめんじゃあつぎの狩り手伝って」


「はい!」






―――― こうして僕と先輩は理想的な?交際をしている。







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