おまけ:未来で語られる愚者たちの哀れな顛末

※こちらは本編終了後のおまけ話で、“俺”こと小天狗君と源さんの間に産まれた子供の舞花ちゃんがヒロインをしている拙作「俺は皆の恋愛対象外な件について」の番外話で、そちらの主人公のタロー君と、舞花ちゃんの幕間話になります。

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「―――で、私が産まれたってワケですよ!」


 そういって椅子に肩ひじをつきながらどやぁ~♪ドヤヤ~☆どやややぁ~♡と赤さんスマイルをするこの女の子は、小天狗舞花ちゃん。

 俺とは色々あって高校になってから行動を共にしている女子で、黒髪ゆるふわミディアムヘアの良く似合う可愛らしい子だ。……ネットミームな赤さんスマイルも、美少女がすると普通に可愛らしくなってしまうのでズルいよね。


「……むぅ、何笑っているんですかタロー君」


「ん?あぁ、舞花ちゃんは面白い子だなって思ってた」


 そう言ってお茶を濁しつつコーヒーを飲みつつ、これまでの事を思い返す。

 俺の“桃園太郎”という名前は、高校に入ってから色々なトラブルに関わった所為で、学園内で有名になってしまった……悪い事は何もしてないんだけどね。

 悪徳生徒会長や教師とのトラブルをこえ、ついでに俺の大事な友達を裏切って陥れた浮気女を弾劾裁判でやっつけたりと良い事をしてきたはずなのだが、悪目立ちして良くも悪くも学園中の誰もが知る有名人になってしまったのですだよ……トホホ。


 ともあれ、夏休みを前にこれまでのを苦労の労いを兼ねて2人でティータイムとしゃれこんでいた中で幼馴染とは何ぞや、という話になり舞花ちゃんのお父さんとお母さんの馴れ初めをこうして聞かせてもらっていたのだ。


「それで、その寝取られ幼馴染さんたちや間男はどうなったの?」


「……亡くなっているみたいですよ」


 言うか言うまいか微妙な表情を見せたが、言葉を選びつつ舞花ちゃんが言った。あちゃー、死んじゃったかー。地獄まっしぐらかな……。


「詳しく話すと長くなっちゃうので大まかな話になりますが、いったんは転校していった岡島姉は約一年後、時間が問題を解決して自分は許されたと勝手な主張をして街に舞い戻り、爆発物なども使った結構な騒動を起こして改めて逮捕されました。

 その際には妹のこのみさんも姐の蛮行を阻止するために街に戻ってきて、お母さんと協力して事に当たっていたみたいですが当時は話題になったみたいですよ。

 半狂乱になって『既成事実!既成事実!!』とか泣き叫びながら連行されて行く姿が新聞とかには載ったみたいです」


 なのみん(笑)救えなさすぎワロ……笑えないなぁ。あと妹さん可哀想すぎなのと頑張りすぎ、敢闘賞でしょ。今幸せになっているといいけど。


「何事も無ければお父さんは実家を継いでいて、岡島姉は社長夫人だったでしょうからね。

 それが自分の犯罪行為をきっかけに両親は離婚、一家離散の極貧生活になった中で、妄想と思い込みの区別がつかなくなってワンチャンを信じてトラブルを起こしたとかなんとか。

 その後は実刑になって刑期を終えた後は夜の仕事に就いていたそうですが、奨学金を使って真面目に大学を卒業して働いていた妹さんにお金をたかりにいったりと散々迷惑をかけたので拒絶と絶縁され、最期は失意の中で事故にあって亡くなったみたいです」


 間男の方はというと賠償金を踏み倒して逃げ出そうとしたけど叶わず、両親は職も資産も失い、間男本人は刑務所の中で性犯罪者扱いでカースト最下層扱いされて心身も肛門もズタボロにされた挙句に出所後は違法な薬物に染まったりしてホームレス生活を送り、ある冬の寒い日に橋の下で亡くなっていたとかなんとか。


 ……なんともいえない後味の悪い話だなぁ、と思いつつも悪い事したらその行きつく先はそんなもんかと思わなくもない。

 やっぱり毎日こつこつ真面目に生きるのが一番だよなぁ~!これからも毎日誠実に真面目に生きることにしよう、そうしよう。

 

「……幼馴染っていうのは不思議ですよね。

 本来であればもっとも恋愛で有利な立ち位置に居るはずなのに、今では寝取られ裏切りざまぁされるのが当然になってしまっています。

 後天的に変更できる外見などとは違って、決して外せない呪いの装備のようです」


「なるほど、確かにいい得て妙だなぁ。幼馴染と言えば寝取られるのが当然みたいな感じあるもんね。それに幼馴染ってのは何かあってもそれ自体は確かに変わらない関係性だもんな」


 舞花ちゃんの言葉に頷きつつ、何度も助けてもらった幼馴染―――コアリクイとかレッサーパンダとかみたいな威嚇のポーズをとる幼馴染の女の子、ともちゃんの姿を思い浮かべる。

 色々あったけど俺とともちゃんは幼馴染で、これから先なにかがあってもこの“幼馴染”って属性は確かに外せない装備みたいなのは確かだ。


「……お父さんたちの時代では、恋愛ゲームのパッケージのセンターは幼馴染の女の子だったりしたみたいですよ。ピンク髪のショートヘアにリボンがにあったり、たい焼き抱えて突っ込んできたりとか。もっとさかのぼると樹の下で告白したりとか。

 でも今は、秒で彼氏を裏切って他の男に身体を赦す―――あの綿貫さんのように、知らない間に他の男に抱かれている裏切り者、という方が幼馴染として定着してしまっていますよね……だから私、犬井さんは凄いなって尊敬してるんです。

 絶対に幼馴染を裏切らずに信じて味方であり続ける幼馴染……そんなのチートですよ、本来だったらその時点で恋のダービーはゲームセットですよ」


 そうか?……そう言われるとそうかも。中学の時に冤罪をかけられたときも、弥平達に悪評を流されたときもともちゃんは俺を疑うことなく信じてくれていたし、そこは素直にともちゃんの強いところかもしれない。


「そもそも、犬井さんが恋愛感情に無自覚だっただけで高校に入ったばかりの頃は2人とも両片思いだったと思うんですよ。色々かみあわなかったから今みたいになっているだけで」


「そうかぁ?ともちゃんが俺をぉ?ないない。……けどまぁその色々が色々とありすぎるんですがそれは」


「結果として今は美人の先輩に囲まれてるからいいじゃないですか。タロー君は年上のお姉さんを吸い寄せるフェロモンか何か出てるんじゃないですか??」


 滅茶苦茶言ってくる舞花ちゃんだがそんな便利なものがあるわけないと笑う。しかし舞花ちゃんはジト目でみてくるので理不尽極まりないっ!


「でもそんな舞花ちゃんのお母さんなら俺もちょっと会ってみたいかも」


 興味本位でぽろっと言ったが、舞花ちゃんはブンブンと顔を高速で左右に振って両腕でバツのジェスチャーをする。何でそんなに必死なの?!


「……それは駄目です!いえ、タロー君が悪いという訳ではないんです……!!……タロー君は絶対、一目でお母さんに“刺さる”のがわかるからダメなんです」


「刺さる、とは?」


 奥歯にものが詰まったような、何とも言いにくそうに舞花ちゃんが説明してくる。


「タロー君って、“愛する者属性”を持っていそうっていうか……自分の事になるとポンコツなくせに人の事になると無理無茶無謀の三連星するじゃないですか」


「なんか俺フルボッコに罵られてなぁい?」


「褒めてますよ?……でもそういう人、お母さんの直球ど真ん中ストレートなので。

 タローくんをうちのお母さんが出会ってしまったら、あらゆる手段を用いられて私と結婚させられると思います。

 ヒメ先輩の満足会とかアオ先輩のブルーコンツェルンとか桜那先輩の議員一家だとかそういうバックボーンを相手にしてもお母さんは多分負けません。

 全力で私とタロー君を結婚させようとするでしょうね、親子だからわかる確信があるんです!!

 ……私はタローくんにはタローくんらしく恋愛をして幸せになって欲しいと思うので、今はお母さんにはあわせられないんです。……お母さんは、私よりももっと“強烈”ですよ」


「――――――…わぁい」


 舞花ちゃんもだいぶん強烈な個性の子だと思うけど、それ以上かぁ。

 俺はまだ見ぬ舞花ちゃんのお母さんを想像しながら、そんな呟きをこぼすぐらいしかできなかった。

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幼馴染が俺の部屋をラブホ代わりに使って浮気していた件について。 サドガワイツキ @sadogawa_ituki

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