第3話

S氏は結婚の決心を両親に話すより先に私達に話してくれたようで、その誠意に応える意見を言わないといけない、そう思うが、質問は「いつどこで知り合っていつの間にそんな段階に?」それしか言葉が出てこない。S氏は「文通で」と一言。え?文通って手紙のこと?そんなにあんた文才あったっけ?とまくしたてても、今時文通で結婚意識する?が本音。正直なところ帰ってきても電話はおろか会ってもないってところで、こいつキモい。やっぱり性癖なんかヘンだって焦るのみ。

その日はそれで終わった。とにかくキモかった。私達夫婦が職場で毎日顔を合わせ、帰りもいつも一緒、週末は半同棲。そういうベタベタアツアツで結婚に至ったので、S氏の行動は何とも理解が出来ない。

後に現れるS氏の彼女にただ驚くのみ。やがて彼女の為人を知る。彼女は大学時代の同窓生で、島に行っている間手紙でやり取りしていたらしい。帰ってきても連絡すらしないS氏になぜか惹かれたらしく、結婚まで決意したとのこと。島流しの理由を知っているのかどうかは分からない。ロリコン癖も理解しているのか分からない。

彼女は化粧っ気もなく、真面目な小学校教諭で、S氏の同級生。童顔でポッチャリタイプ。性格はちょっとキツそうだ。きっと尻に敷かれるであろう。

2人は結婚し、子どもを作らない道を選んだ。義妹は結婚しても教師を貫いた。実家に来るのは年に2回。お盆と正月のみ。義妹の携帯番号は誰にも分からない。そんな硬いプライバシー。週末は義妹は実家に帰り、S氏は放ったらかし。それでお互い満足であれば、口を差し挟む筋はない。時々母とあれでいいんだろうね、と話す。理解できないけど。

S氏の性癖がなくなったどうかは今でも分からない。S氏が子どもをほしがらなかったのもその性癖によるのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

真実はいつも闇の中。

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弟S氏の性癖と職業 緒方亜矢子 @angie5878

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