行方不明になった冒険者
エアポート快特
愉快な冒険者
街の中心部にある、古くてあまりきれいではない酒場。
その扉を開ける者が一人……。
「らっしゃい」
酒場の主が、顔も向けずに挨拶をする。
「マスター、例のもの、できたか?」
ここでようやく、マスターは客の方を向いた。
「うん? ああ、できてるぞ」
すると、客はとても嬉しそうに笑った。
「ありがとな」
客はそう言って、机の上に代金を置き、マスターと呼ばれるこの酒場の主から、一枚の紙をもらった。
「ところで……」
マスターは、重そうに口を開けた。
「お前、クロゾーン鉱山なんて探索できないだろ」
すると、客……愉快な冒険者は、大きな笑い声をあげた。
「大丈夫大丈夫。俺の力を舐めているのか? 俺はこう見えても、凄腕の冒険書だぞ? それに、クロゾーン鉱山には、金銀財宝の宝の山が眠っているんだ!」
マスターは、本気でため息を吐く。
「お前の力を舐めていないからこそ、心配してるんだ」
しかし、愉快な冒険者は全く言う事をかいせず、ニコニコ笑っている。
「ハハハ。この俺の力では倒せないと言われるダンジョンか? 面白い!」
マスターは、無表情で客を見つめている。
「心配するな、マスター。一様念のため、凄腕の用心棒を一人雇ったんだ。だから問題ないぞ!」
すると、マスターはもう一度深くため息を吐いた後、力なさそうに笑った。
「わかったよ。ただし、何か危ないと思ったすぐに逃げるんだぞ」
「わかってるって。いっぱいお宝を持って返ってくるから、酒の用意をして待ってろよ」
冒険者はすぐに荷物をまとめて酒場をあとにした。
「全く……。血の気の多い若造だな」
「いやー、金銀財宝楽しみだな」
愉快な冒険者は、用心棒と合流し街を出て鉱山に繋がる街道を歩いていた。
「まず何をしようかな? マスターの酒を飲むのもいいし……あっ、気になるあの子に告白するのもいいな!」
すると、ずっと黙っていた用心棒が静かに口を開けた。
「お前、ダンジョンを舐めているだろう」
すると、愉快な冒険者は少し怒った顔をしてみせた。
「そんなわけあるか! 俺は自分の力を信じているだけだ!」
「なるほど、その錆びた剣とボロボロの盾、小さなリュックに入った僅かな食料で、あのクロゾーン鉱山を探索するって言うんだから、自分を過信しなきゃできないよな」
用心棒が静かに笑うと、愉快な冒険者は黙って口の端をピクピクさせた。
「そんな愉快な冒険者にいいことを教えてやろう。あの鉱山では、何者かが秘密工作を行っているらしい」
すると、愉快な冒険者は大きく笑った。
「ハッハッハ! そんな噂誰が信じるか。それにもしそんな奴がいても、俺の華麗な剣のさばきで、あっという間にお陀仏さ」
すると、用心棒はまたしても軽く笑った。
「フッ、だといいがな」
やがて、冒険者と用心棒が目的地であるクロゾーン鉱山に到着した。
「だいぶ中まで入ってきたが、魔物一匹いやしねー。きっと俺の偉大なる力にひれ伏せたのだろう!」
冒険者がそんなことを大声で言ったとき、事件がおきた。
それは、一瞬の出来事だった。
「うっ!」
なんと、用心棒が胸を抑えて倒れ込んでしまったのた。
「お、おい、用心棒! 大丈夫か!?」
冒険者が次に顔を上げて周りを見渡したとき、周りには黒いフードで身をまとい、顔を脳面で隠した大勢の人が冒険者の周りを取り囲んでいた。
「な、なんだお前ら! 一体どこから出てきたんだ!?」
すると、怪しげな雰囲気の大勢の人は、冒険者の方を向いて呪文を唱え始めた。
「◯☓▲?□※……」
「う、うお!? 何だ!? の、脳がや、焼かれる……。やめて、く……れ……」
冒険者は、そのまま意識を失ってしまった。
後日、街のギルドに少し大きめの荷物が届いた。
中を開けると、先日、クロゾーン鉱山に探索に行ったまま帰ってこなかった愉快な冒険者の、ボロボロの剣と盾が入っていた。
ギルドの建物の外では、例の用心棒がニヤリと笑いながらタバコを吸っていた。
行方不明になった冒険者 エアポート快特 @airport-limited-express
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