第14話

まずいことになった。

政子は天を仰ぐ。

頼朝に告白するとウソつき、頼朝と2人きりになることが目的だった。

頼朝が政子に好意を持っていることなど手に取るように分かる。

その好意を利用して接近する。

頼朝と2人きりになり消費期限切れのミカンを食べさせ、ミカンを回収し証拠隠滅する。

頼朝の体調不良期に雪合戦を仕掛け公園の覇権を手にする。

頼朝をつぶす抜群の機会だ。

政子も頼朝ももう中学3年生である。たいてい高校生にもなると近所の公園でかまくら作りなんてものをやらなくなる。

鎌倉幕府を潰すことが出来るチャンスは実質今冬が最後なのだ。

頼朝を潰して鎌倉幕府を壊滅させる。

これは4年間誰も達成することが出来なかった偉業であり、誰もが1度は妄想することである。

しかし、頼朝がいる以上雪合戦での勝利は望めない。

ここでとっておきの消費期限切れのミカンを使用する。



ところが、いざかまくらに行くとミカンの皮が雪が詰められて机の上に転がっている。

もう食べてしまったのか?

寝ている頼朝は手袋をしたまま寝ており、袖と手袋の隙間を隠すように蝶々結びしていた。

この状態ではミカンを食うことは出来ない。

誰か…鎌倉幕府の誰かが政子を愛するあまり盗み食いしたに違いない。

しかし、そこまでは問題なかった。

盗み食いした犯人も自白することはないだろうからだ。

犯人は腹を下し、体調不良に陥る可能性がある。

その時、犯人がミカンが原因であると証言すれば、政子の謀略は白昼に晒され、政子の立場はなくなるだろう。だが、頼朝の愛する政子からのミカンを盗み食いしたのだ。犯人もバレたら立場を失うに違いないから出てこれないはずだ。そのため、この事実は世に出ることはない。


と、思ったので政子はミカンの皮に詰められた雪が溶けきらないことを危惧して雪を取り出して机の下に捨て、ミカンの皮を丁寧に整えて机の上に置いてから、かまくらをそのまま去った。犯行方法、犯行時刻、容疑者位置を特定しづらくするためだ。

頼朝が寝ていたから帰ったとか適当な言い訳を後日執権にしておけばなんとかなるだろう。


問題が発生したのはそのあとである。

雪が降った。

足跡は消え、容疑者位置は急速に絞られる。

ミカンの皮の内側に雪を詰めるというトリックをアシストしたせいで犯人は理詰めで政子になってしまう。

なぜなら、ミカンのことを知っているのは鎌倉幕府と政子のみ。鎌倉幕府はアリバイがあり、頼朝は手袋の件で犯行不可能。となると犯人は雪が積もる前にかまくらに来てミカンを食べたという筋書きが浮かんでくる。

頼朝を除く鎌倉幕府は政子がかまくらに来ることを知っている。

万事急須である。

ここから助かる方法は、犯人のトリックに気づき、犯人が自白。かつ、犯人の腹が丈夫であることだ。

健康被害が何もなければこちらはただミカンを食われただけだ。

まさか盗人の腹の具合を心配することになるとは…。


嗚呼、頼朝公よ

山よりも高く海よりも深いその御恩で我を許し給え。

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源頼朝の冤罪証明 gyothe @hongwrite1

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