第5話 君が為、なんて
俺は少女を家に連れ込んだ。
ソファに体を横たえ、天井を見上げる。
ため息、一つ。
「君が為 溶けゆく世にも 惜しくなく」
「和歌。好きなんですか?」
「あぁ、奇麗だからな」
首を上げて、声がした方を見るとあの少女がいた。
サイズの大きいジャージを着て。
バスタオルで髪を拭いている。
俗物的なその姿を見て、何故か。時が止まる。
雨音さえ遠くに置き去りにして。
瞬きの間に気を取り直す。
少女は、唇を震わせ、小さく歌う。
「溶けゆくか 友もむこうみ 口果てむ」
それは俺への返歌。
ああこの娘は、どこまでも。
口角が上がる。目を細め。
それは、久しい笑いだった。
梅雨入りと幸せ。 ポピーの騎士 @beb
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。梅雨入りと幸せ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます