あとがき
この文章を書く直接のきっかけとなったのは、自身のブログに記した「タイパ重視の宇宙人」というエントリーだ(01)。異星人からこの星の知的生命に関する歴史を簡潔に説明してくれと言われた時に、自分だったらどうするだろうかと考えたのがネタ元となっている。大きく5つの画期があるという考えはこのエントリーの時点でまとまっており、後はそれにロジスティック方程式と、将来についての話を付け加えることで大まかな話の枠はできた。
だがもっと遡り、最初にヒトの歴史を大きな観点から見ることができないかと思ったのは、ピーター・ターチンらが手掛けているSeshat: Global History Databank(02)関連のプロジェクトが上げた成果をみた時。彼らの取り組みから、社会の複雑性を算出する方法、道徳的な神、農業の生産性、戦争のもたらした影響など、様々な歴史の法則とでもいうべきものが浮かび上がってきた(03)。実際、これらの研究成果を見てどんな法則があり得るかを検討し、エントリーに記したこともある(04)。
とはいえSeshatで取り扱っているのは基本的に最近1万年ほどの期間に限られており、ターチンも研究成果を書物にまとめる際には題名を「完新世の大転換」にすると記している(05)。一方、この文章で取り上げようと考えた期間は200万年以上前まで遡るため、調査対象ははるかに多くなる。実際、これだけの長期にわたると改めて調べなければならないことも盛りだくさんだった。
手がける範囲が広いため、調べ方の甘いところは多々あるだろう。また特に考古学などの分野では新しい調査法を使っての新発見が相次いでおり、10年もすれば唱えられていた学説が古くなってしまうケースが多い。ここにまとめた研究についても、少し経てば間違っていることがわかる例が増えてしまうと思う。あくまで現時点で分かった内容について自分なりにまとめたものとして読んでもらいたい。
01 https://desaixjp.blog.fc2.com/blog-entry-3456.html
02 https://seshatdatabank.info/(2024年6月1日確認)
03 Seshatプロジェクト以外にもターチンらは構造的人口動態理論という形で歴史の法則について研究している; Jack Goldstone, Revolution and Rebellion in the Early Modern World (2016); Peter Turchin and Sergey A. Nefedov, Secular Cycles (2009); Peter Turchin, Ages of Discord (2016); Peter Turchin, End Times (2023)
04 https://desaixjp.blog.fc2.com/blog-entry-3094.html
05 https://peterturchin.com/what-i-am-working-on/(2024年6月1日確認)
有限世界の方程式 ―人類史5つの画期― @desaixjp
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