ギモーヴ

一葵

お菓子

杏(あんず):「…zzz」


京華(きょうか):「おーい、杏(あんず)ー起きなー?」


杏(あんず):「んー、まだあとごふんー…zzZ」


梨々(りり):「あーんーずー!起きないとデコピンするぞー」


杏(あんず):「んんんー、やだぁ、むにゃむにゃ…」


京華(きょうか):「だめだこりゃ、次、移動教室なんだけどなぁ、困ったな、」


梨々(りり):「どうしよっか、…マジでデコピンする?」


京華(きょうか):「しよっか。じゃないと起きないと思う。」


梨々(りり):「そうだね。よぉし!えいっ!」


杏(あんず):「いったぁぁぁぁい!」


京華(きょうか):「笑笑」


杏(あんず):「何すんのよぉー!」


京華(きょうか):「あんたが起きないからよ。ほら、急いで準備する!次移動教室だよ!ほれ、ほれほれ早く。」


杏(あんず):「うそ!まじで!?え、次何?」


梨々(りり):「ん?えっとねー、次は…あー、家庭科だね。木村かぁ、めんどくさいな。」


杏(あんず):「あー、木村かぁ。あの人嫌いなんだよねー。はぁ、いきたくなぁい。」


梨々(りり):「わかる。でも行かないと減点食らうから早く行こうや。」


京華(きょうか):「そうね。行こ行こ。」


────────────────────


木村:「櫻井さん、櫻井さーん?あら?居ないの?」


タッタッタッタ


杏(あんず):「スンマセーン!遅れましたぁー!」


木村:「櫻井さん、一(にのまえ)さん、隅田さん、遅刻よ。5点減点ね。」


梨々(りり):「うわぁ、うっざぁ、」


木村:「一(にのまえ)さん、なんですって?」


梨々(りり):「なーんでもなーいでーす。」


京華(きょうか):「クスクスクスッ」


木村:「隅田さん?」


京華(きょうか):「いえ、なにも?」


木村:「そう。まぁ、時間も勿体ないから…ほら、3人とも席に座ってちょうだい。」


杏&京華&梨々:「はぁい」


木村:「はい!では今からバレンタインに向けてお菓子を作ります!作るものはギモーヴ。教科書には乗ってないから、私の方からプリントを配るわね。はい、自分の班の人数だけとって回してね。」


ペラッ


カサッ


杏(あんず):「へー、ギモーヴってフランスのお菓子なんだね。」


京華(きょうか):「見た目はなんか四角くて硬そうだけど、」


梨々(りり):「んねー、サイコロみたい。」


杏(あんず):「ねー」


木村:「はい!プリント見た人は、それぞれ材料を取りに中央の机に来てちょうだい。」


杏(あんず):「んー、どれにする?オレンジ?いちご?」


梨々(りり):「いちごがいいんじゃない?美味しそう…」


杏(あんず):「そうね、いちごにしよ!」


梨々(りり):「うん!」


京華(きょうか):「まだー?」


杏&梨々:「いまいくー!」




京華(きょうか):「さて、プリント見ながらするんだよね。」


梨々(りり):「そだね。」


杏(あんず):「えーっとなになにー?」



杏&京華&梨々:「ギモーヴの作り方!」


杏(あんず):「まず、型にラップを敷きます。次にコンスターチと粉糖(ふんとう)を混ぜ合わせ、半分の量を型にふるっておきます。粉ゼラチンは、大きめのボウルに入れた水でふやかしておきます!」


京華&梨々:「はーい!」


京華(きょうか):「いちごのピューレを100g、グラニュー糖を80g、水飴(みずあめ)を30g、レモン汁小さじ1、水を50mlを子鍋に入れて中火にかけます。」


杏&梨々:「はーい!」


梨々(りり):「ぶくぶくと泡立って、105℃を超えたら、火から下ろします!」


京華&杏:「はーい!」


杏(あんず):「ゼラチンのボウルに流し入れ、ゼラチンが溶けるまでハンドミキサーを低速にしてかき混ぜます!」


京華&梨々:「はーい!」


京華(きょうか):「ゼラチンが完全に溶けたら、ハンドミキサーを高速に変えて、白っぽく、ふわっとなるまで根気よく混ぜます。」


杏&梨々:「はーい!」


梨々(りり):「ハンドミキサーの羽に絡みつくように重くなり、絞れるくらいの硬さになったら、混ぜ終わります!」


杏&京華:「はぁーい!」


杏(あんず):「型に入れて、ヘラでならして冷蔵庫に入れて、1時間程度冷やし固めます!」


京華&梨々:「はぁーい!」


京華(きょうか):「冷えたら型から取り出します。そして、合わせておいたコーンスターチと粉糖を茶こしで満遍なく振りかけ、食べやすい大きさにカットします。」


杏&梨々:「はぁーい!」


梨々(りり):「そしてー?」


杏&京華&梨々:「かーんせーい!」


ぱちぱちぱち!


杏(あんず):「やったね!」


京華(きょうか):「んねー」


梨々(りり):「早速食べよーよ!」


杉本:「ちょぉーっと待ったぁぁぁあ!」


梨々(りり):「わぁっ!」


京華(きょうか):「なに?杉本さん。」


杉本:「そこの美形の女子3人、ギモーヴを持って窓際に立て!そして笑顔をカメラ越しに見せろ!」


杏(あんず):「急に何?」


杉本:「いいからいいから!」


京華(きょうか):「ちょ、ちょっと!押さないでよ!」


杉本:「はいはい。」


梨々(りり):「わぁー!」


杉本:「よし、窓際に行ったね!それじゃギモーヴ持って。」


梨々(りり):「行ったじゃなく押しやったんでしょ?」


杉本:「まぁまぁまぁ!ほら、撮るよ!」


京華(きょうか):「はいはい、」


杉本:「よぉし、カメラを見てー。はい笑うー。よし!撮るよー!はいチーズ!」


カシャッ


杉本:「わぁお…すんごいもの撮っちゃった…」


杏(あんず):「なに?」


杉本:「い、いやぁ、これは見せられないかなぁ汗」


梨々(りり):「なによ、見せなさいよ。」


杉本:「あ、ちょっ、ちょっと!」


京華(きょうか):「なに、これ、」


杉本:「だから見せられないって言ったのにー」


杏(あんず):「え、何見せて見せて。」


京華(きょうか):「はい、これ。気色悪いから気をつけて。」


梨々(りり):「えっとー…え、」


杏(あんず):「うわ、なにこれ。」


梨々(りり):「なんであたし、上半身しかないの?怖いんだけど…」


杏(あんず):「あたしに限っては腕だけだよ。」


京華(きょうか):「私は首だけか…」


杏&梨々:「どう撮ったらこうなるわけ?」


杉本:「いや、いやいやいやいや、私何もやってないって!ただ、撮ったらこうなったわけで、」


京華(きょうか):「そ、別にこれが現実で起きる訳では無いから、大丈夫でしょ。」


梨々(りり):「ただのおふざけってことね。はぁ、もー悪ふざけやめてよね?杉本さん。」


杉本:「悪ふざけも何もやってないんだけどな…」


杏(あんず):「いや、悪ふざけじゃん。こんな怖い写真を撮られたら誰でも嫌よ。」


杉本:「ご、ごめんなさい…」


梨々(りり):「ま、いいよ。杉本さんところのギモーヴ3個くれた許したげる。」


杉本:「そ、それでいいなら3つでも6つ、いや、いくらでもあげるよ!」


梨々(りり):「そんなたくさんいらないけど…」


杏(あんず):「とりま、許すってことでおけ?」


京華(きょうか):「そうね。」


杏(あんず):「よかったねー!あたし達に目をつけられたらーって噂があるくらいあたし達根に持つと怖いから。んふふっ。」


杉本:「ひぃ!」


京華(きょうか):「こら、そう怖がらせないの。」


杏(あんず):「いったぁいん」


梨々(りり):「あはは!」


木村:「あなたたち!騒ぐのはいいけど、ギモーヴ出来たの?」


杏(あんず):「げっ、木村じゃん」


木村:「げって言った?」


杏(あんず):「いや、べつに?」


木村:「そう。ならいいけど。」


京華(きょうか):「あの、先生。」


木村:「なに?隅田さん。」


京華(きょうか):「ギモーヴ、もう出来てますけど。」


木村:「あら、そうなのね。あなたたちの班がいちばん遅いと思って声かけたけど、もう出来上がってたのね。」


杏(あんず):「嫌味かよ。」


梨々(りり):「嫌味だね。」


杏&梨々:「はぁー、」


木村:「別に嫌味は言ってないけど?事実でしょ?」


京華(きょうか):「それを嫌味っていうんですよ?先生。」


木村:「あらそう。」


杏(あんず):「あ、ギモーヴ。」


木村:「そうだったわね。…うん、上出来ね。」


梨々(りり):「やったね!」


杏&梨々:「うぇーい!」


パチン!


京華(きょうか):「ふふっ。」


────────────────────


キーンコーンカーンコーン


木村:「はい!今日の授業はこれで終わりです。各自できたギモーヴは、持って帰って食べてください。学校で食べるのは禁止です。」


ザワザワ…


杏(あんず):「きょーかー、りりー、この後どうするー?」


梨々(りり):「んー、カラオケ行く?」


京華(きょうか):「そうね。いこっか。」


鬼塚:「ふふふっ。このカメラで撮れば…くっふふふっ」


────────────────────


鬼塚:「ねね!そこのJK3人待って!」


杏&梨々&京華:「ふふふふっ」


鬼塚:「ってフル無視かよ。チッ。まぁいいや、声掛けて3人まとめて撮ってやろうと思ったんだけど、計画変更。一人一人とってあげよ。ふふっ、3人の顔がどうなるか楽しみだわ。」




杏(あんず):「でさー、脇役の俳優がヒロインの女優にキスしたのよ!でもその演技が下手すぎてさ、笑っちゃった笑」


カシャッ


杏(あんず):「ん?なんかキラキラ…え、」


バンッ!


梨々(りり):「ひぃ!あ、あ、あんず?」


京華(きょうか):「え、え、」


鬼塚:「ひひっ、」


杏(あんず):「ゔ、ぅ゛ぅ゛…あ、足、足が…京華(きょうか)、梨々(りり)、た、たすけて、」


梨々(りり):「あ、あぁ、ひぃ!」


京華(きょうか):「りり、あれって、」


梨々(りり):「京華!それ以上言っちゃダメ!」


京華(きょうか):「あ、あんずの、あし、だよね?」


梨々&京華:「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」


鬼塚:「ひひひっ!もっと撮ってやろー、」


カシャッ


バンッ!


杏(あんず):「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!い゛だい゛!い゛だい゛!」


梨々(りり):「あんずが、あんずが、あぁぁぁぁぁあ!」


京華(きょうか):「あ、あ、え、これって、肉?…あ、あぁ、」


梨々(りり):「杏(あんず)の制服が、あ、赤くなって、あは、あはは、あははは!」


京華(きょうか):「梨々、梨々しっかり。きゅ、救急車呼ばなきゃ…、梨々?」


梨々(りり):「…」


京華(きょうか):「泡、吹いてる。」


鬼塚:「ひひひっ、もう1枚撮ろうかな?」


カシャッ


京華(きょうか):「きゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」


鬼塚:「ひひひっ!」


京華(きょうか):「あ、足、足が…あ゛あ゛あ゛」


カシャッ


バンッ!


梨々(りり):「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!」


鬼塚:「あはは!たーのし笑」


コツコツコツ…


梨々(りり):「ぐぅ、かはっ、い、いたい、いたいよ、ぎゃぁ!」


鬼塚:「ふふふっ」


梨々(りり):「だ、だれ、あんた、」


鬼塚:「あれ?覚えてないの?」


京華(きょうか):「え、」


鬼塚:「鬼塚ゆり。おぼえてない?あなたたちが散々いじめた中学の頃のクラスメイト。」


杏(あんず):「おに、づか…?」


鬼塚:「あら、覚えてないんだ。かなしいなぁ、」


梨々(りり):「…覚えていようがいまいが、ぅ、かはっ、こんな仕打ち、無いでしょ…」


鬼塚:「あら、私がやった事わかってたの?…いや、わかったんだね。」


梨々(りり):「そ、そりゃ、わかるでしょ、ぐっ…」


京華(きょうか):「かはっ、」


鬼塚:「後ろからつけてたの気づかれてたわけね。別にバレても構わないんだけどね。だってこうやって復讐ができてるんだもん。ふふっ、」


京華(きょうか):「最っ高に、クズな性格してるね。」


鬼塚:「あなた達に言われたくない。あー、むしゃくしゃしてきた。」


京華(きょうか):「杏(あんず)!」


杏(あんず):「え、」


カシャッ


バンッ!


ビチャッ、ビチャッ


鬼塚:「あは、あはは!これって撮る度に威力が強まるのね。櫻井が吹っ飛んで肉塊(にくかい)になって…あ、腕だけ残ってる。うわぁ、骨と肉が丸見え。気色わる笑」


ズッズッズッ


京華(きょうか):「あ、あんず、あんずが、あ、ぁ、」


鬼塚:「あはは!隅田さんの大切な友達が腕だけになっちゃったね笑」


京華(きょうか):「…なによ、」


鬼塚:「は?」


京華(きょうか):「いじめごときでなんでここまでされなきゃいけないの!それに、いじめられたって言ってるけど、元凶アンタなんだから!アンタが梨々(りり)に妬み嫉みむけてたのは知ってたのよ!だから、梨々(りり)の大事なお母さんの形見(かたみ)のお守り盗んで燃やしたんでしょ!」


鬼塚:「…」


京華(きょうか):「被害者ぶってんじゃねぇよ!」


鬼塚:「ごちゃごちゃうるさいな。」


京華(きょうか):「か、カメラこっちに向けないで!」


鬼塚:「嫌だね。今、最っ高にあんたにイライラしてんのよ。あんたは首だけにしてあげる。」


京華(きょうか):「なっ!」


カシャッ


バンッ!


ビチャッ、


コロ、コロコロコロ…


梨々(りり):「う、うぅ、」


鬼塚:「あ、起きた?」


梨々(りり):「え、も、持ってるそれって、」


鬼塚:「ん?あぁ、これ?隅田の首よ?それがどうしたの?」


梨々(りり):「あ、あ、きゃぁぁぁぁぁあ!」


鬼塚:「はぁ、こんなクズ女の首見たぐらいで泣くなんて、私なんてもっと酷い目にあったのに。」


梨々(りり):「は?お前の方がクズでしょ!人のお守り盗んで燃やしておいて、よく言うよ!いじめられた理由だってそれでしょ!てか、然(しか)るべきことをした迄(まで)よ。ただ、あんたが勝手にむしゃくしゃして、あたしらに当たりたかっただけでしょ!魂胆見え透いてんだよ、この脳無し!」


鬼塚:「はぁぁあ?ふざけるのもいい加減にして。あんた達のせいで私は行きたい学校が行けなくなったし、あんたのせいで好きな人に嫌われたのよ!ぜんっぶ、あんた達のせい!私は何も悪くない!私は何も悪くないかあんたたちに復讐が出来る。はっ笑、みじめね。」


梨々(りり):「惨めはあんたよ。こうやるしかあたしたちに復讐できないって。はっ、馬鹿みたい。」


鬼塚:「あー、イライラする。もういい、死んで。これ以上イラつかせないで。お前たちさえ死んでしまえば、遼くんは振り向いてくれる…ふふっ、楽しみだわ。」


梨々(りり):「あいつがお前なんかに振り向くかよ。ばっかじゃないの?」


鬼塚:「うるさいわね。黙れ。てか、死んで。」


カシャッ


バンッ!


梨々(りり):「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!あ、あ、あ…」


鬼塚:「あはは!きんも笑笑。うわぁ、内蔵丸見え。…ん?これって、お菓子?血塗れになってるけど、食べてみようかしら。というか、これなんのお菓子かな?」


カシャ


鬼塚:「んーと?ギモーヴ?マシュマロとは違って、フルーツのピューレを使ったフランスのお菓子…へー、こんなものあったんだ。てかこんなもの作ったんだ、このクズ共。食べてみよ。」


もぐもぐもぐ


鬼塚:「なんか変な食感。あんまり美味しくないけど、なんか、腸を食べてるみたい。気色悪いけど、ま、いいわ。持って帰って砂糖でも振って食べよ。」


────────────────────


杏(あんず):「ギモーヴ。それはあまーいお菓子」


梨々(りり):「ギモーヴ。それはとてもとても美味しいお菓子」


京華(きょうか):「ギモーヴ。それは、」


鬼塚:「人間の腸に似た食感らしい。」




Fin

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ギモーヴ 一葵 @hina-poultry-

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