選択ルート④「じっとして」

手持ち花火当日になった。

碧は、花火セットとバケツを持っていた。彼の後ろを、大量の花火セットを抱えながら、彼女は追いかけた。


「いや、2人でやるには多すぎるだろ。」


「余った分は来年やればいい」と彼女が提案すると、「来年も…ね」と意味ありげに彼は呟いた。


花火セットにはいろんなものがあった。置き花火、色が変わる手持ち花火や変わり種など、どれも楽しそうだった。


彼女があれこれといろんな花火を試すそばで、「はしゃぎすぎ」と碧は微笑んだ。彼にも手持ち花火を持たせると、少し慌てたように受け取った。



いろんな花火で遊んだが、醍醐味は線香花火だった。小さい頃から、2人でどっちが長く線香花火が続くか勝負した。


2人はその場にしゃがみ込んで、線香花火に火をつけた。少し風が強く、なかなか火がつかなかった。


「じっとしてて」


そう言って、碧は彼女と肩をくっつけるようにしゃがんだ。風が入ってこないように、体で風を遮断したのだ。


ただ、彼女はいつもよりも近い碧の顔に、思わずドキッとした。今までは、ただの幼馴染であり、疎遠になることが寂しいと思っていた。


しかしそれだけではなかったのだ。いずれ彼が自分から離れていってしまうかもしれない。もしかしたら、来年は彼の横で線香花火をしているのは、自分ではないのかもしれない。そう思うととても切ない気持ちになった。


無事に線香花火に火がつき、勝負が始まった。2人の線香花火はどんどん膨れ上がった。少しして、碧の先端が落ちた。彼女の勝ちだ。


少し悔しそうな碧の顔を見て、彼女は気持ちを隠すように笑った。なんでもない線香花火が、まるで彼との別れをカウントダウンしているような気がした。



***


「これが最後の花火だから。」


そう言って碧は、最後の線香花火を彼女に渡した。そして、彼女の手を包むように、自分の手を重ね、火をつけた。「最後は一緒にやりたい」と彼は言った。


線香花火の先端が膨れ上がった。これまでよりも大きく、そして長く続いた。


やがて最後の花火が消えると、あたりは一層暗く感じた。このまま帰りたくない。そう思っても、彼を引き止める理由が出てこない。


黙々と片付けをする2人の間に、沈黙が流れた。


「楽しかったな」


碧が口を開いた。表情は暗闇でよく見えなかったが、彼もどこか名残惜しい声音だった。彼女は…


【選択肢】

A「すごく楽しかった」

→エンディング①(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075929008459)に進む

B「終わっちゃうのが寂しい」

→エンディング②(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075928981790)に進む

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