選択ルート

選択ルート①「買ったんだけどさ」

昔、皆で手持ち花火をした時に、花火の火の粉が飛び散って、翠の靴に穴が空いたことを話した。


「あれは、ちょっとしたパニックだったよな。」


翠がその時を思い返して言った。靴に火の粉がついたことに、面白がっていた彼女と碧を見て、翠と彼女たちの家族が慌てて、水をかけたのだった。


「あとあとお気に入りの靴だって知って、あんた大泣きしてたし。」


碧が笑ったので、「碧だって、一緒にしょんぼりしてたくせに」と彼女は言い返した。何度も翠に謝っていた時、碧は彼女の手を握って「もし翠が許してくれなかったら、ボクも一緒にごめんなさいする」と支えてくれたのだった。


「そんな思い出も、もうだいぶ前なんだな。」


翠がそう言いながら、3人分のアイスを持ってセルフレジに向かった。そんな前からずっと3人で一緒に遊んでいたのだと思うと、時間の流れは早いのかもしれない。


ただいつからか、こうやって3人で集まる回数は減っていた。中学生になると、それぞれ別の友達ができて、顔を合わせる機会も減ったからだった。唯一この勉強会が、彼女たちを繋いでいた。


このまま疎遠になってしまったら寂しい気がした。何か新しい思い出が必要かもしれない。彼女はそう思った。



***


翌日の夜。後は寝るだけの彼女は、毎日書いている日記をつけていた。するとスマホがなった。電話に出ると、相手は碧だった。


「今暇?」


こんな時間になんだろうと思いつつ、彼の指示通りベランダに出た。すると、目の前の彼の家のベランダに碧が立っていた。


彼は電話越しに要件を伝えた。


「週末空いてる?実は、家に手持ち花火が残ってたみたいでさ…」


たまたま部屋の整理をしていた時に、押し入れから未開封の花火セットが見つかったらしい。


彼は目を逸らしながら、首に手を当てた。この仕草は昔から碧の癖で、大体嘘をつく時の仕草である。「本当はやりたくて買ったのではないのか」と伝えると、どうやら図星のようで、ベランダ越しにも彼の赤面する顔が見えた。


実のところ、この前コンビニで見た手持ち花火を見て、またやりたいな思っていたのだ。そのことを伝えると、碧は少し嬉しそうに微笑んだが、照れ隠しのため真顔に戻った。


手持ち花火の約束をしながら、彼女は…


【選択肢】

A「いっぱい写真撮りたい!」

→選択ルート③(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075954398022)に進む

B「線香花火で勝負したい!」

→選択ルート④(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075955512002)に進む

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