2-3 少年王子様
「……。」
気まずい。
風呂に入ると第3王子のアイゼアさんがいた。
…今、俺の目の前で一緒に浸かっているわけだが。
改めてみるときれいな顔立ちだ。みんな整ってるんだよな、この兄弟姉妹たち。
それにしてもこう見るとただの少年だな。本当は外で同年代とはしゃぎたい年頃だろうに。
RPGのゲームとかに出てくる王子たちもこんな感じだったのかな。
「あの…」
遠くで縮こまっている少年に声をかけてみる。
「ぁ、はい!」
裏返った大きな声で返事をされる。そんなに緊張するか?
「なぁ、えっと…アイゼア、殿下?俺、そんなに怖いですか?」
「ぇ?」
「…いや、怖くはないです。ただあまり人と話さなくて。」
なるほど。まぁ、世話係とか侍女とかにしか会わないんだろうな。
「…近くに行ってもいいですか?」
「あ、あぁ大丈夫ですよ。」
びっくりした。いきなり話しかけられたから。
アイゼアさんは俺の横に来た。
え?何か話とか始めるんじゃないの?アイゼアさん黙りこくっちゃったよ?
「あの!僕は強くならないといけないんでしょうか?」
「え?」
「強くなる…っていうのはお兄さんみたいにということですか?」
「…はい。それと、アイゼアでいいですよ。僕のほうが歳が低いと思うので。」
「えっと?アイゼア…は何歳なんだ?」
「僕は今年で14になります。上の兄上とは14、下の兄上とは6つ離れています。」
やっぱり中学生くらいか。第3王子ともなると将来はどうなるんだろう。上にもう一人いるから王位は継がずに隣国に行くのか。それともこの国で王族として暮らすのか。
14ってことはルイスは26なのか。もう少し若いかと思っていたけど。ルークさんはちょうど20。俺とほぼ同じだな。どちらにせよ若いことには変わりない。王様ってもっと口ひげを生やしたぽっちゃりを想像していたんだけどな。
「俺的には、どっちでもいいと思うけどな。王族が何たるかとかこの国の取り決めとか全然知らないけど。俺たち前の世界で好きなこと仕事にしてた奴らだからさ、好きなことしたい気持ちはわかるよ。」
「好きなことができないときは?好きなことが全部できたわけではない…ですよね?」
「そうだね。全部思い通りなんてそんなにうまくはいかないよ。けど、その中でも好きなこと、楽しみ、やりがいを見つけるんだ。疲れた時は頭空っぽにして寝る!で、起きたら全部吹っ飛んでる。」
「寝る…」
何故いきなりこんなことを言い出したかはわからないが何か事情があるんだろう。深追いはしない。
「何かあったら周りの信頼できる人に相談してみなよ。俺でも良いよ、俺がアイゼアの信頼に足るかはわからないけどね。」
俺はそれだけ言って浴場を出た。
「夢庵っち!こんなところにいたの!?」
脱衣所に飛び込んできたの誇妖さん。汗を額につけて息が上がっている。走ってきたのだろう。
「さがしたよ~部屋行ってもいないから。」
「あぁ、すみません。風呂につかりたくて。それでどうしたんですか?そんなに急いで。」
「《むらさき。》さん、五十嵐来弥が…いなくなった。」
「え?」
こんな俺らにどうやって世界を救えと!?(仮) 鴨芝 @tyeri_sakura
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