あたたかいココア

古 散太

あたたかいココア

あたたかいココアを飲みながら

窓を開けると

ヒバリが空の高いところでひとり言

私が知っていても知らなくても

世の中は勝手に進んでいく

私がすべてを把握することはないし

把握しようとも思わない

ヒバリのひとり言を聞きながら

あたたかいココアを飲む

これほど幸せなことはない

すくなくとも今

私はこの上ない幸せの中に生きている

これ以上望むことは何もない

人は生きて死ぬ、それだけのこと

誰も千年は生きられない

だから今

あたたかいココアをゆっくり味わう

ヒバリのひとり言に耳を傾ける

フキノトウが顔を出しスイセンが大地を彩る

それで充分じゃないか

誰かの上に行って誰かの頭を押さえても

何かを手に入れて何かの中で頂点になっても

幸せになるどころかいろいろと面倒が増える

だったら私は

春の花の美しさに見惚れながら

ヒバリの歌声に聞きほれながら

あたたかいココアに舌鼓を打つほうがいい

それが私の人生だと言い切れるように

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あたたかいココア 古 散太 @santafull

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