高黄森哉


 こんな問題があった。詳細は違っていたはずだが、とりあえず、覚えている範囲で再現しようと思う。


・問題

【北に十キロ、南に十キロ、東に十キロ、すると科学者は元居た場所に戻ってしまった。クマの色は何色】


 一見すると、なにを言っているかわからないかもしれない。しかし、安心して欲しい。とにかく、皆様には安心して欲しい。特に理由はないが、一旦、安心して欲しい。安心かもしれない、でも、安心していただきたい。


 ではまず、北に十キロ、南に十キロ、東に十キロ、元居た場所に戻ってきた、の部分に着目しよう。これはつまり、科学者がいた場所が小惑星だった、という意味だ。円周が十キロの小惑星ならどの方角に十キロ移動しようが、元居た場所に戻ってくる。この考え方は、なんということだ!、科学者である必然性にも答えているではないか。

 さて、場所がわかったので、あとは熊の色だ。まず、小惑星という過酷な環境下で生きられるクマを探さなくてはならない。まず、大気はないだろうし、宇宙の寒さや恒星の熱波が過酷極まりない。はて、そんな環境に耐えうるクマいただろうか。それがいるのである。


 それは、クマムシだ。


 クマムシの色は、透明だから、この問題の答えは透明。クマムシが決してクマの類ではないこと、地場のない小惑星に方角は存在しないこと、科学者は宇宙飛行士ではないこと、そもそも答えが間違っていること、そういったごく僅かな、些細な、端数然とした、取るに足らない、といった微々たる問題にさえ目をつむれば、この答えは正解である。え、それじゃあダメだって? それはクマった。

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高黄森哉 @kamikawa2001

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