サヨナラ、小さな罪
スマホを川のど真ん中に投げてから、何日が経っただろう。
自分がどこにいるかも分からないくらいだ。それなりに日数は経過しているはずだ。
あの川は生物の多様性に溢れすぎて崩壊するかもしれないと言われ続けている。
投入されたスマホで生態系を崩せるだろうか。
無理だろうな、無機物だもん。
ブラックバスだって食べないよ。
スマホを投げたあの日、綺麗な夕焼けに背を向けて歩き出した。
その後、喫茶店に入ってからすべてが狂いだしたわけだ。
行き先がないなら決めてあげると言わんばかりに、あの地図が現れた。
これからどこに行こうかな。
歩いていれば、きっとどこかにたどり着く。
それでいいか。それでいいや。
プランも何もない、歩き続けるだけの旅だと思っていた。
あのスマホもそうだ。
数年前に発売された機種だから、バッテリーは劣化し、すぐに充電が切れる。
それなりに大事に使っていたと思う。
画面が割れなかったのは、運がよかっただけかもしれないけど。
スマホがなくなると連絡が取れなくなるし、ゲームもできなくなる。
友達やペットの写真もある。地図や天気予報だってあった。
どうでもいい記録がバカみたいに詰まっている。
大事といえば大事だし、捨ててもいいといえば捨ててもいい。
だから、俺は後者を選んだ。思い切って捨ててしまった。
それでよかったと思っているし、不思議と後悔はない。
自由になれたから、どこに行っても自己責任だ。
サヨナラ、みんな。いつか会ったら、謝らせてね。
同題異話SR総決算シリーズ 長月瓦礫 @debrisbottle00
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