第3話人生初デート
どうしよう。お家デートって一体どうすればいいんだ。洋服何着て行こうか。彼女らしくするって何を具体的にすればいいのだろう??わからないことだらけで頭がパニックになった。そんな中ふと、高校時代の友達である美沙が
「舞子、彼氏が出来たら絶対連絡してよ!」
と言ってくれたのを思い出した。美沙は私と同じように少し重ためな女子だから私の気持ちもわかってくれるし、信頼できる友達だからすぐにラインをすることにした。
「美沙ー、彼氏ができた!!今日告白されたの。」
数分後に
「えええ!おめでとう!!!!」
と返信が来たので、
「ありがとう!お風呂入った後、電話してもいい?」
と聞いたら
「うん!たくさん話聞きたい!」
と返信してくれたので、急いでお風呂に入って30分後に美沙に電話をかけた。
「舞子久しぶり〜。彼氏おめでとう!!」
「ありがとう!美沙〜。」
「詳しく聞かせて(笑)」
「うん。今日ね、カメラサークルで嵐山に行って...」
そこからは今日あった出来事を事細かに話した。
すると美沙は
「え。それ大丈夫?付き合ってもいいよって何?その告白の仕方、気に入らないわー。上から目線じゃない?」
「確かに...」
私は彼が"告白をしてくれた”、私を"好きになってくれた"ことばかりに焦点を当てていたので、その違和感に気づかなかった。
「それに、初めっから家に誘ってくるのもちょっと怪しいよ。何もしないわけないじゃんね。ちょっとその男、危ないんじゃない?」
「え、それで家には行かなかったけど、明日家デートってことになっていて...」
「家!?やめときなよ!どこかカフェとか、外に行きな!家は危ないって。」
「そっか。カフェあんまわからないから近くのショッピングモールとかでいいかな...。」
「まあ、舞子がいいならそこでいいんじゃない?」
「ありがとう。ちょっと連絡してみる。」
「”家はちょっと嫌だから”っていうのをちゃんと言ったほうがいいよ!」
「じゃあそれも入れてみる!」
「あと夜は帰りな!時間を言ってちゃんと帰ったほうがいいよ!」
「わかったー!」
美沙のアドバイス通りに文章を打った。
「こちらこそありがとう!これからよろしくお願いします。あと、まだ家に行くのはやだから△△△ショッピングモールに行きたいんだけどどうかな?」
すると15分後に向こうから
「ええよ!そうしよ!何時集合にする?」
と返信が来たので、13時集合にした。
「後、18時まででいい?」
と送ったら
「オッケー!」
と了承を得たので安心した。
「舞子、また家に誘われたら要注意だよ。ちょっと距離置いたほうがいいと思う。」
「そうなんだ。わかった。今日は夜遅くまで話聞いてくれたありがとう!すごく助かった!!」
「うん!またどうだったか話聞かせてね!」
美沙との電話が終わったのは夜2時過ぎだった。
翌朝、目覚めて「彼氏がいる」という状況に驚きつつ朝ご飯を食べ、洋服を選んだ。頭の中がいっぱいで心臓がどくどくした。ラインでのやりとりで昼食はパスタを食べる予定になった。洋服はワンピースにしようか、でも寒いからニットにしようかなどと迷っていた。結局白ニットにジーパンというシンプルなコーデにした。
13時に駅で待ち合わせなのだが、5分前に駅についてしまった。すると
「ごめん、ちょっと遅れるわ」
と奏太君から連絡が来た。
「りょーかい!」
と返信したが、初デートで遅れてくるか?と多少の疑問を抱えつつ待った。もしかしたら「昨日のこと覚えてないから友達じゃん?」などと言われたらどうしようなんて不安もあった。
13時10分に彼は到着した。
「ごめん、遅れちゃって。」
「ううん、全然。乗れなかったの?」
「寝坊しちゃってさ。」
「え。なんで?」
「今日が楽しみすぎて昨日寝れなかった(笑)」
そういうものなのだろうか?初デートって約束の時間に遅れてもいいの?
と頭の中に?が浮かんだが、グッと飲み込んだ。
「昨日のこと、覚えている?」
「覚えているよ。」
「私たちって付き合っているで合ってる?」
「うん。」
やっぱり夢じゃなかったんだ。嬉しさが込み上げて一人で勝手に幸せを噛み締めた。
パスタ屋さんでお昼ご飯を食べてショピングモールをぐるぐると歩き回った。奏太君が手を差し出して恋人繋ぎをした。これが彼氏というものなのか。私が彼女になったんだと実感していた。家具屋さんのソファでくつろいだし、本屋さんではお互いハマった漫画を教え合った。
「急にショッピングモールに場所変更しちゃったけど来てくれてありがとう!」
「全然。ていうかさ、舞子、家行くってすけべなこと想像しとらん?」
「え!?」
それはそうだろう。昨日の時点では絶対そういうことになっていただろうし、家に行くということは何が起こってもおかしくない状況だ。
「う、うん。」
恥ずかしがりながらそっぽを向いて答えた。
「別にそういうことじゃないから。家だったらスキンシップとか人目を気にせずできるし、学生だからお金ないからって理由だよ。」
「え、そうなの?」
「だから安心してよ。」
うーん、そう言われたら妙に納得してしまうような。実際彼はバイトをしておらず、お金をかけない主義だそうだ。私自身も物欲がないのでお金をかけるものもなく、金銭感覚は合うのかな程度に感じた。
それから何度も家においでと誘われた。一緒にゲームをしよう、漫画があるからそれを読みにおいで、料理を一緒にしようなどなど。美沙のアドバイスでは、こいつはもうアウトだ。しかし、私自身もインドア派だし、せっかくできた彼氏だし、などと理由をつけて美沙のアドバイスを軽んじてしまった。
「クリスマスはイルミネーションを見に行きませんか?」
美沙の提案をそのまま言った。イルミネーションは寒い中なんでカップルは見に行くのだろうと思っていたが、危ない家に行くよりかはマシだとこの時は思った。
「あーいいよ。ていうかクリパもせん?」
「クリパ???」
「うん、クリスマスパーティー。ケーキ買って家で食べるの。」
また家か!と思ったがその時は「考えておくね。」と答えを先延ばしにした。
18時になってちゃんと家に帰った。
「今日はありがとう。楽しかった!じゃあまたクリスマス会おうね。」
「うん、俺も!楽しみにしてる!」
美沙には「大丈夫だった。」と連絡した。彼から距離を置くことはできなかった。そんな正常な判断ができずに縋り付いてしまった自分がいた。
人生初デートはふわふわと地に足がつかないような記憶で幕を閉じた。
期待しないと楽になれるのかな はちみつれもん @lemon_yumenaraba25
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