第2話 数年前

俺が小学2年生の頃

「、、、きて」「、、、きて」「起きて!」身体を揺さぶられながらそんな声がしてくる。

「あと少しだけ、、、」重い瞼を開けながら声の主に言う。

「もう9時よ!遅刻!早く学校に行きなさい!」いつもは優しい母だが今日少し苛立っている。

「お母さんとお父さん今日仕事があるから早く支度しなさい!」

「うぅぅん」

唸り声のような声で返事をし、まだ眠い身体を動かして学校の支度をする。

「早く乗りなさい!」

お父さんが運転する車で小学校まで送ってくれるらしい。窓の外を見ても通学路に生徒らしき人は居ない。そりゃそうだもう一限が始まっているのだから。

「じゃあ頑張るんだよ」

「バイバイ」

お母さんの優しい声を受け校内に入る。教室の扉を開けると皆がいっせいにこちらを向く。

「遅れました〜」

「公くん、、おはよう。」

少し呆れたような口調で先生が挨拶をする。和葉がくすくす笑っているのが目に入った。少し恥ずかしい。

和葉や友達にからかわれたりしたが2限目まで普通の生活を送ることが出来た。しかし、

「松田公くんはいますか!?」

「はい。僕ですが何か?」

あまり関わりのない先生だ。急にどうしたんだろう?そんなことを考えながら返事をする。

「その、、、」申し訳なさそうな表情で何かを伝えようとしている。

「先程連絡が来たんだけど、あなたのご両親がその、事故で、重症なの」

「え。」

頭が真っ白になる。言葉が出ない。何を言ってるんだ?この人は。

それから2日後両親は死んだ。

どうやら信号無視で走ってきた車と衝突したようだ。母は即死、父は骨や内蔵が見えていたが息はあったそうだしかし、懸命な治療も虚しく、死んだ。相手側は多額の賠償金を払い、懲役4年になったそうだ。両親が死んだ後親戚の家に住むこととなった。

「大丈夫、私が隣にいるから」

「私はいなくなったりしないから」

時折来てくれる和葉が唯一の心の支えだった。和葉がいたから乗り越えられた。


学校に行くまでの時間そんなことを思い出してしまう。最近はそんな事が多くなってきた。時計を見るともう家から出る時間だ。



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透化病 まきじゅ @makiju

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