透化病

まきじゅ

第1話 嫌だ、、、

「え?なにこれ、、、」

「いや、いや、嫌だ」

「誰か!誰か助けて!誰か」

「どうして私が、、、」

「どうした!和葉!」

「公!助けて、、、」

この世界は理不尽だ。何も出来ない。何も伝えられない。何も叶わない。薄れ行く身体を見て私は改めてそう思った。


この世界には透化病という病気が存在する。その名の通り身体が透明化し、存在が無くなってしまうと言う病気だ。その患者数は世界に30人だそうだ誰も知らない所で消えた人もいるのでもっと多いかもしれない。


雨が降る。

幼馴染である竹松和葉はもう居ない。暗い部屋の中そんな現実は俺の胸を締め付けた。

「どうしてこうなった、どうして、、、どうして、、、」涙が止まらない。ただ泣くことしか出来ない。悲しい。寂しい。辛い。その気持ちはいつまでも収まることはない。「俺はあの時どうすれば良かったのだろう?」答えの無い問いが口からこぼれる。

俺の中であいつはどんなだったか?ただの幼馴染。本当にそうだったか?あいつはいつも笑顔で、友達思いで、皆に優しくってでも俺といる時は少し弱くて、辛いときは一緒にいてくれて、特別な存在。また涙が溢れてくる。


「ねぇ公、私たちはさいつまで一緒にいられるのかな?」

「いつまでも一緒にいられるよ」

「へへ///そうだねいつまでも一緒にいよーねー約束だよ」

「ああ、約束。」

「破ったらダメだからね!破ったら呪ってやる〜」

目が覚めた。スマホを見ると午前4時2分という表示が見え、ロック画面の壁紙が見えた。中学の時に和葉と遊園地で撮った写真だ。懐かしい夢を見たような気がするけどなんだっけ?

和葉が消えてからから1年が経った。気持ちが落ち着いて学校にも行けるようになってきた。だが心にぽっかり空いた穴は塞がらない。

いつまでも夢の中にいたい気分だ。いや、こっちが夢なのか?そんなことすらどうでもよくなるらい頭が痛い。ベッドの枕元を見ると薬が散乱している。どうやら睡眠薬を飲みすぎたようだ。効果が薄れてきてる。明日にでも病院に行こう。そんなことを考えていたら頬が少し濡れていることに気付いた。





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