人事

故郷

中宵汽車に乗りて辺地の郷に帰る

  中宵󠄁乘汽車歸邊地鄕

車中夜客會樽前󠄁

話到土毛皆靄然

何幸有人同故里

回看寒󠄁月亂峰邊


  中宵ちうせう汽車に乗りて辺地の郷に帰る

車中 夜客 樽前そんぜんかい

土毛どもうに到りて 皆靄然あいぜんたり

何ぞさいはひならん 人有りて故里こりを同じくするや

回看くゎいかんす 寒月かんげつ 乱峰らんぽうの辺り


  夜半、汽車で遠い故郷に帰る

汽車の中。少し開けた場所に置かれた酒樽。乗客たちはその前に集まって、酒を酌み交わしながら会話に興じている。

その話は次第にそれぞれの故郷の産物などに及び、皆が和やかに楽しそうな様子である。

その光景に思う──ああ、なんと幸せなことであろうか。同郷の人がいて、あのように故郷の話ができるというのは。

私は堪えられず目を背け、窓越しに独り、陳なる山々と冷たい月とを遥かに見るだけであった。


────


作品No. 4

七言絶句(平起こり)

押韻……下平声一先

皆が里帰りの道中であるのに、その中で自分と同郷の人だけが居ない、そんな孤独を詠んだ詩。大学のサークルの部誌に載せたものです。

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漢詩 ── 班白扇詩集 班白扇 @Hakusen_Harumaki

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