第28話 奏の過去
幼いころから、奏は女装に憧れていた。というよりも、かわいらしいものにあこがれを抱いていた。
可愛い服や、可愛いスカート、可愛い靴などに。
だからこそ、自分をかわいく着飾ろうとした。そう言った可愛らしいものに見合う自分になれるように。
そんな中、彼はずっと厳格な父親に内緒で女装用の服を買って集めていた。
父親にばれるわけには行かない。ばれたらそらく全部捨てられるから。
父親は常日頃から日本男子の生き様を説いていた。
例えば、女性に優しくしろとか、可愛いではなく、かっこいいを目指せとか、様々な注文を付けてくるのだ。所謂前時代的なお父さんだ。
たまたま姉に見られたときにはビビったが、彼女が黙ってくれるおかげで助かった。
奏は中学進学を機に、遠くの学校に行くことになった。
彼自身頭がよく、近くの学校に行かせるのもいけないという判断だ。
その判断に、少年奏は大いに喜んだ。
「いいか、奏」
奏の父の、山崎義光が言う。
「中学から一人暮らしになる。大変な事だが、お前の姉の春香がいる。困ったときには彼女に頼むのだぞ。勿論わしに頼んでもいいがな。そして、わしからも時々会いに行こう。そして、ゴールデンウィーク、お盆、正月には少なくとも帰ってこい。わしの大切な一人息子よ、元気で行ってこい」
それを受け、奏は新たな新居に移動した。
そこで奏は――大いに喜んだ。
これで、父親に見られることなく思い切り女装が出来ると。
一応未来のクラスメイトに見られたら不味いことにはなる。だからこそ、女装は念にに念を込めて、かわいらしく、奏の面影をなくした姿にしなければ。
幸い、生活費として渡されたお金が沢山ある。
これがあれば女装用の服だけじゃなく、ウィッグ、メイク用品、靴などにも多少のお金を避ける。
奏はすぐさま、必要な用具を買いあさった。問題としては昼ご飯の学食に使えるお金が減るという事か。
だが、それは昼ご飯自体を抜けばいいだけの話だ。
彼が女装をして外に出たのは、入学式の二日前だ。それまでに十分な用意はできた。
奏にとっての初の女装外出だ。
(ああ、緊張する)
初めての女装での外。もし、女装がばれたら大変な事になってしまう。
いくら中学生という無垢な年齢でも、他人に女装がばれたらどうなるかなんて目に見えている。
きもがられるだろう。
そして近くのスーパーまで行った。
今の奏の服装は、ひらひらとしたスカートに、白いモフモフとしたコートだ。
スーパーの中に入ると、複数人の視線がこちらに向いた。とたんに奏は震えた。もしこれが女装してる男子に対する好奇な目だったらどうしよう。
ただの変態として処理されてしまう。
一瞬帰ろうかな。そんな思考が脳を支配する。
でも、ここまで来て帰るのは逆に嫌だ。
彼は一歩一歩歩みを進める。
そして、慣れない手つきで、一つのパルメジャーノチーズを取る。
今日の夕食のカルボナーラ―を作るために必要なものだ。
それと、肉と野菜を取った。
「ねえ、お使い?」
その時に、近くにいた女子高校生が話しかけてきた。
(これはどっちだ?)
判断に困る。これは、男児に対してのしゃべりか、女児に対する喋りか。
一応中学生はまだぎりぎりロリ、ショタの組分けが出来る年だ。
だからこそ、話しかけてきたのかもしれない。
それに奏は背が低い。見た目だけなら小学5年生に見られても不思議ではない。
「うん。私ね、これ買いに来たの」
さあ、どっちだ。
奏は敢えて女子喋りをして反応をうかがう、
これで、女装してるの? などと言われたらすべて終わりだ。
「そう、偉いね」
そう頭を撫でられた。その瞬間奏は明るくなった。
自分は今の瞬間、女の子として見られている。
嬉しく思った。
そしてそのあとは、レジでお会計だ。
「はい、これお願いします」
その瞬間軽く高揚した。女装して買い物を済ませられたのだと。
その後、そのまま帰るのも惜しいので、近くの図書館に行って本を読みに行った。
奏自体、そこまで本は普段読むほうではない。
ただ、文学少女感を出したいのだ。
せっかく女装しているのだから、もっと奥の人に可愛いと言ってほしい。
そう思っているのだ。
奏は本を読みながらちらちらと向こうを見る。
僕を見て、僕を見てよと。
しかし誰も振り向いてくれなかった。
そうだった、図書館は本を読む場所。みんな本に夢中だからこちらを向いてはくれないのだ。
くそ。
だったらと、奏は次の場所、服屋へと向かった。
「ここなら、振り向いてくれるはず」
しかも今の奏のコーデは、奏が重い中で一番可愛らしいものにしたのだ。
スカートだから少しだけ寒い。
だが、それは我慢しよう。自分の我儘だ。
そして服を見て回る。可愛らしい服がいっぱいだ。それもそのはず。ここは、女子専用店だからだ。
仲には国民的モンスターバトルゲームのキャラの服が会ったりとか、ディ〇ニープリンセスの服がある。
だが、それよりも奏の目を引いたのは、猫のシンプルなシャツだ。
それが一番彼に可愛いと思わせた。
欲しい。でも、四六〇〇円か。地味に高い。これを買うと、今月の振込料じゃ足りなくなる。かくなる上は、今月常に昼ご飯を食べない生活をしなければならないかもしれない。
それもそのはず。勿論お金は振り込まれてはいるが、新生活の容易で大幅に飛んでしまったのだ。
まさか中学生の立場で一人暮らしさせてもらってる以上。新たなお小遣いをあの父親に頼むのも引けるし、新しい服が欲しいからと言ってkれを見せたら絶対に女装用だと思われて資亜夢。
いや、まあ、この程度なら男で着れるは着れるけど。
そもそもこれを着た程度では、女装とは言えない。
「お嬢ちゃん、迷ってるの?」
そんな時に、店員さんが話しかけてきた。
ちゃんとお嬢ちゃんって言われた。嬉しい。
「うん、これ買おうか迷ってるの」
正直自信でもこの喋り方はちょっとないなと思ってる。自分が世間的な中一女子をよく知らないからか、少しドラマとかに引っ張られている気がする。
「そうねえ、じゃ、着たところをお姉ちゃんに見せてもらえる?」
「うん、分かった!」
そう、俺は言ってすぐに着ようと、更衣室に行く。
しかし、少し女と思わせてしまってるのが少し申し訳なく思ってしまう。
その後、すぐさま着替え、外に出る。
「似合ってるわね」
すぐさま店員さんにそう言われた。
可愛いと。
そしてそれはお世辞によるものではないと少年長良に思った。
そして、彼女はすぐさま、おすすめコーデを考えてくれた正直に言ってそれは少年奏にとっては最高にうれしかった。
自分よりもはるかに、詳しいのだ。
そのお姉さんは、ファッションに精通していたのだ。
その日は結局お金が無くて買わなかった。買いたかったが、諦めた。
その後、尿意を感じた奏は近くのトイレに向かった。だが、そこで迷いを感じた。
これはどちらのトイレに入ればいいのだろうか。普通に考えれば男子トイレだ。男子特有のあれも着いてるため立ちションが出来るから。だが、男子トイレに入ったら女装だという事がばれ、問題になる可能性もある。
迷った結果、奏は男子トイレに向かった。
流石に犯罪者にはなりたくなかったのだ。
周りの人にじろじろと見られて正直気が気ではなかった。ああ、この人たちはどう思っているんだろうか。
そんな地獄の散れタイムが終わり、トイレから小走りで出た。
もう、その日はやることがなかったので、喫茶店で、ゆっくりすることにした。
そこで奏は視線を感じた。そこそこの男性が結構見ている。
これは、僕の女装が可愛いと思荒れてるってこと?
気分が高揚していく。
そして、喫茶店から出たタイミングで声をかけられた。
「ねえ、これから俺の家に来ないかい? おかしあるよ」
そう、眼鏡をかけた小太りのおじさんが声をかけてきた。
これは所謂ナンパ。や、違う。これは、ロリコンだとすぐさま奏は理解した。
もしもこれが同い年の男子でも断る。
むしろ大人なら断る理由が増えた。
鼻息を荒くしたおじさん。
可愛いと思われるのは大歓迎だが、後半財のすくに巻き込まれるのは大問題だ。
「ごめんなさい」
とりあえず逃げよう。
そう思い、奏は逃走した。
「はあはあ、つっかれたー」
奏は清々しい笑顔でそう言った。
大変だが、楽しかった一日だった。
それから、お小遣い(生活費)が入るたびに彼は服屋さんに女装して行った。
ロリコンに声をかけられることも多々あったが、そのたびに逃げまくった、
店員さんおすすめコーデを買うために。
その頃には女装でのお出かけも身になって来た。
カフェに行ったりとか、ショッピングとか、映画とか、多岐にわたるようになってきた。
だが、
「友達ができない」
新たな問題点が生じた。
友達がいないのだ。
学校で女装の事を話すわけにもいかない。という訳で、クラスの男子と話す話題がないのだ。
(これが、ファッションとかのは無しだったら話せるんだけどな)
奏の趣味は今男子よりも女子に向いている。
派手な男性ヒーローが大活躍するアクション映画よりも、美少女が変身して戦う映画の方が好きなのだ。
それと、恋愛が関わってこない、ヒューマンドラマか。
そして奏は、男性隅から離れてしまっている。
勿論精神が女とか言うわけでは無い。ただ、趣向が女側にいるというだけだ。
その結果、彼は孤独を突き詰めることとなってしまった。
元来女子に話しかけてもよかった。
だが、会話ができないうちに、話しかける勇気も亡くなってしまっていたのだった。
そこで彼は学校では勉学に励むようにした。
別に奏は勉学が好きなわけでは無い。ただ、生きる手段としてとらえている。
そんな彼の生活に転機が訪れたのは中学二年生の時だった。
その時に彼は周平と出会ったのだ。
修平は俗にいういい奴だった。
会話が下手な奏の話に付き合ってくれた。
奏は奏で、女装の事や、女児じみた趣味のことは離せないため、話せることが少ないため、少しだけ、無趣味のやつだと思われた。だが、それでも修平と一緒にいる時が楽しくなった。
修平の話を聞くのが好きになった。
ただ、少しだけ、デリゲートじゃないときもあるが、いい友達だ。
クラスの孤高の狼がなついているのは女装した俺 有原優 @yurihara12
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