難しい問いかけ 三題噺/マット/ショート/背後

雨宮 徹

難しい問いかけ 三題噺/マット/ショート/背後

 ビリーは健康のために散歩をしていた。普段は会社への通勤しかしない。これでは、メタボになってしまう。妻から「健康のために散歩をしなさい!」と言われて、仕方なく散歩をしているのだ。


 

 義務的に散歩をしていると、背後から声をかけられる。ふと、振り向くとそこには友人のマットがいた。マットは学生時代は成績優秀で、今では哲学者になっている。今回も難しい話をしてくるに違いない。


「やあ、ビリー。久しぶりじゃないか」


「ああ、そうだね」ビリーはそっけない返事をする。


「ビリーはこんな言葉を知っているかい? 『謎は存在しない。問いが立てうるのであれば、答えもまた与えられる』。哲学者のウィトゲンシュタインの言葉だ」とマット。


 マットの言葉を簡単にまとめるとこうだ。「謎があれば解あり」。哲学者は難しい言葉を使うが、「自分は賢い」ということを誇示したいからに違いない。ビリーは内心、マットを嫌悪した。


「じゃあ、ビリー。これはどうかな? 『問いは立てられない』という問いを立てたら、どんな結論になるかな?」マットが問いかけてくる。


 ビリーは考えた。「謎があれば解あり」ならば「『謎は立てられない』という謎を立てられたら、どんな解があるのだろうか」と。


 ビリーの脳は難しさのあまりショートした。

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難しい問いかけ 三題噺/マット/ショート/背後 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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