第7話 初見殺しには初見殺し
今日も今日とてダンジョンを探索する。
本日はこちら、4階層でございます。モチーフになっているのは火山地帯。
どうして3階層でひぃひぃ言っていた俺がこんな危険なところにいるかというと、それは出現するモンスターの種類が関係する。
ご存知3階層には冒険者も真っ青な武闘派スケルトンたちがシェアハウスで暮らしている。彼らは見た目の割に非常に仲間想いの熱いやつらだ。体温あるかは知らんけど。
病の短剣がある今ならば一体ぐらいはどうにかなるかもしれないけど、もし囲まれでもしたら速攻ゲームオーバー。そもそもゲームでもこいつらが一体で出てきたところを見たことがない。
それに比べると4階層は比較的平和だ。
一つの地雷を除けば、ストーンゴーレムや岩ヒトデなど固くて遅いモンスターが多く、死亡リスクは低い。
それにそういった物理耐性モンスターは病の短剣にとって絶好のカモだ。
病の短剣は装備者に『病』状態をもたらすが、その分性能が高い。ゲームで『病』無効のアクセサリーを着けてでも装備させることもあった。特性が『状態異常無効』の呪われた民との相性の良さは語るまでもないだろう。
病の短剣は下層のレア武器なので、いくら優秀とはいえ中層、上層の武器と比べるとその性能は大きく劣る。それでも中層あたりまでレギュラーから外れないのは唯一無二の特性があるからだ。燦々と輝くそれは、
『防御力無視・中』
上層の一部の武器でようやく現れるその特性は、初見殺しのグレスピでたくさんの初心者を救ってくれた。
まさに下層攻略にはうってつけのダンジョン武器と言える。狙っていた武器の一つがこんな簡単に手に入るとは。神様は日頃の行いを見ている。
1階層と2階層でウサギと薬草に塗れて人生を終える可能性も十分あった。
──ま、本当に一文なしになっちゃったけどね!
気を引き締めよう。傷薬も買えない今、骨折でもしようものならほぼ詰んでしまう。金を……!今は一心不乱の金稼ぎを……!
「おっと──」
決意を新たにしたところで、ストーンゴーレムを発見した。3Dは初見だが、ドットではその姿をよく見ていた。生でみると本当にそこらの石像と変わりないように見える。
拳のところに赤い染みがある理由は考えないことにしよう。
さぁここからは、ドラクエじゃなくてモンハンだ。ファーストアタックの仕方はもう決めている。
グレスピには龍人のスキルで『ジャンプ』というものがある。1ターン画面外に消えたあと、上から落ちてきて大ダメージを与えるものだ。
この世界に転生してからずっとクソ雑魚な俺は、どうにかゲーム知識が使えないかと悩み続けてきた。
その成果の一つがコレだ。
「ジャンプならぬ、落下」
このスキルを再現するためたくさんのホーンラビットにご協力をいただいた。足の骨を折ったこともあったし、肩に角が刺さったこともある。肉を抉る痛みでようやくモンスター選びを間違えことに気が付いた。
──さぁ、準備はいいか、ストーンゴーレム。俺の落下はちょっとばかし響くぜ。
死にゲーに転生した俺は今日も生き足掻く たぬき @tanukigatame
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