最終兵器。
崔 梨遙(再)
1話完結:1000字
岡山で暮らしていたときに、何度も広島に遊びに行った。
或る日、盆休みを利用して知人の良夫が大阪から遊びに来た。寮の僕の部屋に泊めてあげて、倉敷などを案内したのだが、3日目になると、
「せっかく岡山まで来たから、広島へ行ってみたい」
と良夫が言った。
そこへ、年下の先輩、高野が遊びに来たので、
「じゃあ、3人で行こう」
ということになって、男3人、車で広島市内へ行った。
とりあえず飲みに行ったら、僕は悪酔いして吐きそうになった。少し夜風に当たろうと、僕は街の片隅に座り込んだ。
すると、良夫と高野がナンパを始めた。いつもなら僕が率先してやりそうなことだが、この時は吐き気がひどくて戦線離脱状態だった。
「大阪から来たんやけど、遊びに行かへんか?」
良夫のテンションが高いのがわかった。すっかり旅行気分のようだ。だが、とにかく女の子達には無視され続けていた。
「?」
同じように女の子をナンパしている3人組の男達がいた。その3人組が声をかけている女の子達に、高野と良夫が声をかけていた。これは良くない。他人のターゲットを横取りするのはナンパ師としてのルール違反だ。
「先に声をかけたんは向こうやから、こっちに帰って来い」
僕は良夫と高野に声をかけた。
でも、もう遅かった。
良夫と高野が殴られ始めた。
「帰るぞ!こっち来い」
良夫と高野に声をかけた。2人がこっちへ走ってくる。
「お前も仲間か?」
僕も3人組の内の1人に胸ぐらを掴まれた。
「こっちが悪かった、謝るからもう辞めようや」
と言ったが、腹を殴られた。痛くはなかったが、悪酔いしていた僕は猛烈な吐き気をもよおした。
「……おい、最終兵器を出すで。秘密兵器や。逃げるなら今やぞ」
「何を言ってるんだよ!」
「行くぞ……ゲボーーーッ!」
僕は目の前の男の顔面にゲロを吐き出した。ゲロまみれになる男。臭い。
手が離れたので、僕はその隙に逃げた。
良夫と高野も逃げている。僕達は駐車場まで逃げ切った。
ようやく一安心というところで、僕はまだ駐車場の隅で吐いていた。
「びっくりしたなぁ」
良夫が言っていたが、僕は、
「お前らが悪い!」
と、吐きながら言った。
「でも、殴ることはないやろう」
高野が言ったが、
「たいした怪我が無かったし、本当に乱闘になったら会社を巻き込むから、これでええんや」
とばっちりを受けた僕は不機嫌だった。
でも、また広島には遊びに来るだろう。
最終兵器。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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