第20話 安堵の帰還
裏路地を無事に抜けたビアトロは傾きつつある太陽に焦りを募らせながら橋を渡り、スカータ・オシュの中州にあるガシオン公が住む屋敷に向かった。
突然の訪問にも関わらず要件を伝えると、程なく公への目通りが叶う。
「貴公には驚かされるな、まさか彼らとも面識があるとは」
「今日知り合ったばかりです」
数日前に出会ったこのグアナ・ラテリアの領主、フォルト・ガシオン公はビアトロが預かった巻物の内容に目を通し終えると顔をあげ、席を立つと日が沈みつつある大海が見える窓辺に立つ。
「そうか。事情は聞いているか?」
「ええ、まあ」
「そうか、ならば話は早い」
そういうとガシオン公は振り返る。
「そなたにはしばらく彼らとの連絡役を頼みたい。無論報酬は出す。
そう言われ、流石にビアトロは逡巡する。
盗賊結社に狙われる危険と報酬、ビアトロはそれを内心で天秤にかけるが……
「分かりました」
報酬の魅力と何よりもここまで関わっておいて今更無関係となれるとは思えず、ビアトロはうなずくしかなかった。
ビアトロが『
「ビアトロさん!遅いよ!」
宿の入り口をくぐったビアトロを待ち構えていたのは眉を吊り上げ、腕組みしたラトだった。
「すまない」
素直に謝意を表すビアトロにラトは表情を和らげ、
「お仕事大変だったんだね。でも、みんなビアトロさんの歌を待っているんだから、早く早く」
「あはは」
ラトに手を引かれて宿の隣に併設された酒場に向かう間、ビアトロは今日はどの物語を披露しようか考えを巡らせるのであった。
虹色の英雄伝承歌 (ファーレ・リテルコ・ポアナ) 紅刃の章外伝2 ~港町「スカータ・マレ・スタ」の光と影~ 新景正虎 @shinkagemasatora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます