第19話 影の抗争
「ビアトロとか言うたな。ラタペ・ルダを制したあんたになら、話してもよかろう。
儂らは、このオヴェ・スタフィ王国の前身、旧スタフィ王国が興る前からここに住んでおるものたちの末裔じゃよ」
「……ではあの地下道が作られたのも」
ビアトロの問いかけにトプソンはうなずく。
「うむ、儂らの先祖、あるいはその先祖を支配していた別の人種と言われている。
儂らは長年ここをすみかにしてきたが、あの忌まわしいファルテス教団との戦いによって多くの仲間を失った。
戦後、スタフィ王国の奴らはここに人を呼び込んで復興を進めたが、それを拒むもの達がこもるのがここじゃよ」
「……なるほど」
「儂らは長年王国からの協力を拒み続けてきた、しかし、最近になって別の奴らが勢力を伸ばし出し始めた」
忌々しげに表情をしかめるトプソン。
その態度と言葉にラトプを狙った暗殺者の存在を思い出したビアトロは何かをひらめく。
「まさか」
「さっしがいいの。
あやつらはこの裏路地を支配するつもりのようでな。儂らと王国の不和に付け込んできおった。
思案の末、奴らに対抗するには王国の奴らと手を組むべき。儂はそう考え、他の奴らを説得して賛同を取り付けるようこやつに頼んだ訳じゃ」
トプソンの言葉にラトプがうなずく。
「だが、動き回っているうちにルクシャの奴らに見つかったらしくてな、一旦姿を隠し、ほとぼりが覚めるか誰かが迎えに来るまで待つことにしたのさ」
「そうでしたか」
おぼろげではあるが事情が飲み込めたビアトロ。そんな彼に対して……
「親父」
「うむ、ビアトロとか言うたな」
目配せをするトプソンとラトプ。
「……はい」
トプソンの言葉に何かを感じ、ビアトロは身構えながらうなずく。
「もう一つ仕事を引き受けてはくれんか」
「仕事?」
拍子抜けしたか、首を傾げるビアトロにトプソンは懐から巻物を取り出す。
「そう、この書状をここの領主、フォルト・ガシオン公に渡してほしいのじゃよ。無論礼はする、前金でな」
意外な申し出にビアトロは面食らうが、
「……分かりました」
断る理由を見いだせず、また前金の魅力にも抗えず、ビアトロは相手の思惑に乗せられていることを肌で感じつつも、差し出された巻物を受け取り、その場を辞する。
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