AI に願いを

フィステリアタナカ

AI に願いを

「この記事の要約したものを作ってくれ」


 僕はスマホに向かって喋り、ChatGPTに指示を出す。要約された物を読み、気になったものは元の記事を確認するようにした。今となってはChatGPTは仕事の効率化には欠かせないツールだ。


「先生。今度、短編を作ってほしいのですが」


 一年前までは物語の種となるアイデアを、自分自身で捻り出していた。これが大変な作業で、いわば0から1を作るような骨の折れる作業だ。


「どんな感じの作品を作ればよいかリクエストはありますか?」

「そうですね。今回は恋愛もので高校生の青春を描いたものを書いていただければかと」


 リモートで編集担当者と打ち合わせをする。画面の奥に見える担当者の目は気にせず、僕はChatGPTに音声入力をした。


「恋愛もので高校生が夏祭りを楽しむような、アイディアキーワードを10個出して」


 スマホに表示された文字列を見る。「お好み焼きソース」というキーワードに引っかかりを覚え、今回はそのキーワードを元に短編作品を作ることにした。


「お好み焼きソースというキーワードを元に作りたいと思ったのですが、何かありますか?」

「そうですね。せっかくなので主人公が一途にヒロインのことを想い続ける、そんな作品を描いてみてはいかがでしょうか?」

「わかりました。では今から取り掛かろうと思います。出来上がり次第メールしますね」

「よろしくお願いいたします」


 ◆


 翌日作品が出来上がり、担当者にメールをする。内容は、


「お世話になっております。ご要望の作品が出来上がりました。『君とお好み焼き』と言うタイトルで、作品のURLは、https://kakuyomu.jp/works/16818093074273384193/episodes/16818093074273755513 となっております。校正の方をよろしくお願いいたします」


 メールを送った後に、「ああ、校正もChatGPTに頼めばよかったな」と思ったが、文章が堅苦しくなると高校生らしくなくなるので、やはり人の手で確認した方が良いと考えた。


 ◆


「大変良いですね。この作品、来年のコンテストに応募してはいかかでしょうか?」

「そうですか。ではもう少し推敲してブラシュアップさせますね」


 担当者との話し合いの中で、もしかしたらこの作品は、来年のコンテストの賞が取れるのではと言われた。ChatGPTを使い始めてから二年後。AIの使い方について試行錯誤をしたが、おかげでようやく作家としての夢が叶うかもしれない。AIに負けないよう、これからも良い作品を作り続けよう。


「SFもので未来への希望が叶うような、アイディアキーワードを10個出して」


『二年後の――』

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