二年後の流れ星

夕日ゆうや

流星の恋

友樹ゆうき! 今までありがとうねっ!」

「ああ。こちらこそ」

 月の光の中、俺は顔を伏せて、地面にあるアリの巣を見つめる。夜なせいかアリは見当たらない。

 今日、俺は幼馴染みで恋人だった里桜りおにフラれた。

 そうして、俺たちは新たな道を歩き出す。

 高校二年から続いたこの関係も、社会人になった今までよく続いたと思う。

「あ。流れ星だよ」

 里桜が言った先にキラリと輝く隕石。


☆★☆★☆


 あれは確か今ぐらいの冬。

 そう。

 あれから二年が経っていた。

 俺はあの思い出の公園に訪れていた。

 一人で夜空を見上げるが、彼女の温もりは感じられない。

 俺、どこで間違ったのだろう。

 社会人になり余裕がなくなっていたのは確かだった。

 今なら分かる。

 俺は成長をし、余裕も生まれた。

 それでも里桜に会うことはできない。

 俺の落ち度だった。

 彼女はもう新婚さんだ。

 邪魔をするわけにもいかない。

 ひとりぼっちの俺は、どこかあの流れ星に似ていた。


 二年もの間、輝き続けていたわけではない。

 あのときとは違う隕石。

 大気圏の空力加熱によって表面を焼くばかりの石の塊。

 帰るか。

 俺は踵を返し、振り返る。

「きゃっ」

 後ろから来ていた女性にぶつかった。

「すみません。大丈夫ですか?」

「は、はい……」

 どうやら転んだ様子もなく、軽くぶつかった程度だったらしい。

 安心した。

 彼女が顔を上げると、どこか幼げな顔立ちだが、整っている。亜麻色の髪を揺らし、どこまでも純粋そうな茶色い瞳に吸い込まれそうだ。

 星を見に来たのだろうか。

「暗いから気をつけて帰りなよ。きみ、可愛いから」

 俺はそれだけを言い残し、自宅へと向かう。


☆★☆★☆


 冬の寒空。

 太陽は雲に隠れ、チラチラと粉雪を吹雪かせる。

 俺は会社に出勤する。

 いつも通りだ。

 昨日は感傷に浸っていたが、仕事場に来ればリセットされる。

 毎日の忙しさが戻る。

 だいたい、結婚が幸せなんて時代は終わったのだ。

 気持ちを切り替え、女上司と一緒に取引先へ向かう。

 亜麻色の髪をなびかせる取引相手。

 そう。

「あっ。昨日の!」

「きみ……は?」


 俺は二度目の恋をした。


「また、会えましたね」

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二年後の流れ星 夕日ゆうや @PT03wing

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