55 友達
友達
大人になったらさ、恋と友情ならどっちをとると思う? ……難しい。友情って言いたいけど、本気の恋ならその恋を応援してあげるのが友情のような気もする。
私が迷っていると、ぼくは恋だと思う。恋は友情に勝るよ。それはどうしようもないことだと思う。とあなたは言った。そういわれると、確かにそうなのかもしれない。(私も自信があるわけじゃない。まだ知らないだけで、本当の恋をしたら友情なんてすぐに忘れてしまうのかもしれない)……でも、それでも私は友情をとるとあなたに言いたい。
だって、私はあなたとずっと友達でいたいと思うから。子供っぽいって言われちゃうかもしれないけれど、あなたと生涯ずっと友達でいたいって、本当にそう思うんだ。
「霰ちゃん。一緒にさ水族館にいかない?」
樹お兄ちゃんの部屋に遊びにきていた八坂奈緒は霰の部屋のドアをノックして、霰と会うとそんなことを言った。
「水族館ですか?」と霰はいう。
「うん。そうだよ。私と樹と霰ちゃんの三人で行こうよ。樹がさ、霰ちゃんと一緒ならいいよっていってるんだ。ね、お願い」と奈緒は言う。
人間の友達が苦手な霰だったけど、奈緒のことはあんまり嫌いじゃなかった。大好きなお兄ちゃんがとられちゃかもと心配していたのだけど、奈緒は霰にもとても優しくしてくれた。
だから、まあ、別にいってもいいかな? と思った。
うしろをちらっと振り向くと飾と木蔭はいきたいというような顔をしていた。だから霰は「はい。わかりました」と言って、奈緒とお兄ちゃんと三人で水族館に遊びに行くことにした。
「前にもきたよね。なつかしいな」と樹は言った。
「うん。懐かしい。もう一年位前だよね」ととてもうれしそうな顔をして奈緒は言った。
奈緒はその髪の毛をいつもポニーテールの髪形にしていた。その後ろ髪の動きが猫のしっぽみたいでまるで飾のようだったから、霰はなんだか奈緒のことが嫌いになれなかったのだった。
水族館(けっこう有名な水族館だ)はお休みの日ということもあってとても混雑していた。「じゃあ、はぐれないようにしよう。霰。手をつなぐ?」と樹はいう。
「ううん。大丈夫」とこっそりと木蔭と手をつないでる霰は樹お兄ちゃんにそう言った。
君と飛び、跳ねるように。(旧) 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。君と飛び、跳ねるように。(旧)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます