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木陰の言う通り、霰の動物の猫の耳としっぽとひげはそれからすぐに自然と無くなった。(木蔭の力に霰の体がなれたということらしい)その代わり、木陰という新しい家族が霰にはできた。霰にしか見えないけど、木陰は霰の部屋に住むことになった。木陰はすごく喜んだし、霰も幸せそうだった。そんな二人を見て、良かった、と、微笑みながら飾は思う。
「そういえば、霰の身に迫っていた危険って、なんだったの?」と飾は言った。霰と飾と木蔭の三人はいつものように東雲神社にいる。
みんなで霰のお母さんからもらったアイスクリームを食べていた。
飾からそう聞かれると木蔭は「……うーん」と難しい顔をして悩んでしまった。「よく。わからない」と飾を見て木蔭は言った。
「それは私も木蔭に聞いたよ。なんでもさ、危険がせまっているのはわかるんだけど、その危険が実際にどんなものなのかは、わからないんだって」とアイスクリームを木のスプーンで食べながら霰は言う。
「不幸がくる。あるいは危険な目にあうことはわかっても、それが実際にはどんなできごととして起こるかまではわからないと、なるほどね」と(アイスクリームを食べて目を輝かせている)飾は言う。
「木蔭がいてくれれば大丈夫なんだって。だから心配ないよ。飾。このあとはさ、私の家でゲームして遊ぼうよ。漫画もあるよ」とにこにこしながら霰は言った。(木蔭はアイスクリームを食べ終わって、霰のふともものうえに頭をのせてごろごろとしている)
「うん。いいよ。別になにかすることがあるわけでもないからね」とにっこりと笑って飾は言った。
それから霰の提案通りに三人は木立家にいって、霰の部屋でゲームをしたり、漫画を読んだりして遊んだ。
守護霊である木蔭の力なのか、それからしばらくの間はなにも不思議なことはおこらなかった。霰は飾と木蔭と一緒に三人でいつも集まって遊んだ。そんな楽しい毎日が続いた。
でも、人生はずっと楽しい毎日だけが続くわけではないらしい。楽しければいつかはつらくかなしい日がおとずれることもある。……新しい出会いが、別れがある。
春は出会いと別れの季節なのだと霰は思った。
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