来ないでほしいと願うワガママだけが増えていく

釣ール

選別

 自分でも自分がわかってない時は大抵大事な誰かを排除したあと。


 処刑人という汚れ仕事を前世にしていたのでは?とかんぐってしまうほど自分の冷酷さにいつも悩む。


 もちろんそんな人間に打ち解けられる場所はない。

 別に強者気取りではない。

 能力や功績でジャッジする馬鹿な友人がこの前亡くなった。


 元々友人は長生きするような楽しみ方をしていたわけではないし、自分ともそれなりにヤンチャをしながら友情が産まれたので仲間意識もあった。


 どっちが不仲になって、どっちが離れたのか分からないくらいには彼とこの世を戦ってきた。


 もうその必要もなく、ただ罪の意識と残酷なまでの先の長さにどこにも涙を流せず感情が消えていく。


 きっと日記に書いていいことじゃない。

 分かっているつもりだったとくだらない地上波のバラエティみたいに年寄りか家庭のある人間達にに笑われるだけだ。


 それも全て自分が正義と思って親しい相手を排他した罰だ。

 誰しもが受け入れられる運命ではない。

 口じゃなんとでも言える。

 実際は「私が間違ってました。」と白状して楽になりたかった。

 そんなことは自分も誰も許さないだろう。


「自分にだけは不運は来ないでほしい。」と七夕の笹にある短冊に願ったからひねくれた彦星か織姫にプレゼントされてしまった。


 強がるしかない。

 謝るしかない。


 そうか。

 こうして限界集落は他の人間に馬鹿にされるわけか。

 ほんの少しだけのあやまちで。


 人間で化石になったってなんの価値がある?

 永遠にけむたがられるだけだ!


 学習した時はいつも遅い。

 そうか。


 自分もワガママな生き物のひとつに過ぎなかったんだ。


 この本音の言葉は果たして誰に『みえている』のだろうか。

 生霊いきりょうとは、この誰にも助けられない化石になった自分のことだと友人の墓の前だけで泣いていた。

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来ないでほしいと願うワガママだけが増えていく 釣ール @pixixy1O

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