casE4
頭のネジを締め直した。
ゆるんだままだと、正体がバレてしまうから。
毎朝必ずチェックする。
外で作業すると、正体がバレてしまうから。
正体がバレてしまうのは、いちばんよくないこととされている。過去にヘマをしてバレてしまった個体は、プレスされてスクラップになった。こうはなりたくないと思うので、わたしはヘマをしない。
「今日はどちらに向かわれるんですか?」
エレベーターではなく、一階のホールで、作倉さんと会った。赤銅色のよれよれのスーツに、ボタンダウンシャツ。わたしの両親が生きていたら、このぐらいの年齢だろう。作倉さんのほうがもうちょっと上かもしれない。
「図書館まで行って参ります」
インターネットに載っていない情報は、書物から拾い上げなくてはならない。現地に赴くこともある。交通費は、領収証を提出すれば全額支給されるので、領収証は忘れずにもらっておく。
「わたしもご一緒していいでしょうか?」
予想外の申し出に、返事に詰まる。数多の能力者を統率するRSKの旗揚げ人にして、代表取締役ともいうべきポジションの作倉さんが、わたしに?
「あなたの邪魔はしませんよ。あの『神影』の作った改造人間が、どこまで人間らしく作動しているかを、この目で確かめたいのでねぇ」
作倉さんのサングラスの裏側には、赤色と青色の瞳がある。どちらかが過去を視て、どちらかで未来を視るのだ。両方の瞳で、現在を見ている。
「いいですけど、お忙しくはないのですか?」
「わたしは、有事の際に責任を取るためだけにいるので」
そんなことはないと思う。そういうスタンスだから、現場主義の霜降さんには煙たがられるのではなかろうか。考えすぎか。
塩漬けの歯車 秋乃晃 @EM_Akino
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