リンガが残した種
「リンガ導師の逮捕により、今日からあたしが、リンガアカデミアの学長です!」
かつてリンガが立っていた教壇に立ち、抑揚のあるはきはきとした声で生徒たちに呼びかける女性がいた。
彼女の名はフォンリ。
表社会では人気の舞台役者である。
しかし、かつて表社会での地位を利用してアカデミアの生徒を集めた、学園の実質的なナンバー2でもある。
「マジかっ!逮捕されちまったのか!じゃあ……この間から帰ってこないソクゼンも」
「逮捕されましたっ!」
不安げな不安げなメイオーンに正論ド直球で真実を伝えるフォンリ。
「生徒2人に導師まで逮捕だなんて……もっと、法を守りませんか?」
「ダメですっ!法に従っていては、成功などできませんっ!」
穏健な案を唱えるパスティアに対し、フォンリはそれを断固として拒否する。
かくいうフォンリも、かつて自らの夢に邪魔だった弟や妹をリンガ指導のもと始末することで、成功した過去があるのだ。
「まあでも、まだスキルで皆を救い出せるメイオーンがいるのが救いだ。数十日後の卒業式まで彼を守ればどうにかなるだろう」
冷静に事態を俯瞰するコピペトロ。
「残ったあなた達がすることはただひとつ、卒業式の日までに少しでも多くの救済を行うことですっ!」
アカデミア活性化のために、生徒たちを煽るフォンリ。
リンガアカデミアには、卒業式という行事が前々から予定されている。
生徒たちがアカデミアを卒業し、主席の生徒にリンガの持つ3つのスキルが送られる記念すべき日。
それが卒業式であった。
生徒たちは皆、リンガが持つ力を己の野望や理想に役立てるべく、今日も主席の座を狙っているのだ。
「ヨウロ、報われて本当によかったなぁ……!」
ジュピテルは教室の隅の方で、新聞に華々しく乗ったヨウロのインタビュー記事を読んでいた。
リンガ逮捕以降、ヨウロはナーシェンと共に一級冒険者になると同時に、ギルドの策略で英雄として持ち上げられた。
すべては、リンガがもたらしたスキルデマを
「とはいえ……彼の存在でスキルに関するデマが無くなるのはちょっと厄介だが……」
これまでリンガやその一味が社会に対して持っていた優位性は、スキルの後天的習得の有無であった。
社会側は生まれ持ったスキルと武術で立ち向かわないといけないのに対し、リンガ側は臨機応変に習得したスキルで攻めることできたのだ。
しかし、ヨウロという生きた反論材料が大活躍し、大々的に取り上げられた以上、デマの消費期限は迫っていた。
「早いとこ、支配による救済の準備を終えないとなぁ……まあ、導師の賛同者が上手いこと時間を稼いでくれるだろ」
そう言いつつ、ジュピテルは新聞のインタビュー記事をハサミで切り取り、折りたたんで胸ポケットにしまった。
1人1スキルが当たり前の世界でスキル5つ持ちになったので、冒険者として全力で生きていきます 四百四十五郎 @Maburu445
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