未知との遭遇

「人が……2人いる……!」


飛来物が落ちた海面近くの浜辺には、見たことのない鎧を全身に装着した男女2人の人間がいた。

 



『ヨウロ、気を付けろ!2人のうち男性の方は魔力を全く感じないが、女性の方はプルサ以上にある!』


 青鯱魂が魔力保有量を推し量り、警告する。


 プルサの魔力保有量は45万マナ前後で一級冒険者の中では随一である。


 それ以上となれば、かなり熟練の魔術研究者であることは確実だろう。


『やあ、私の名はマテリア。隣にいるのは義父のロンリネス。共に惑星キンキランドの人間だ。転移系の魔術で連れ去られた家族を探すために、ここに来た』


 謎の女性ことマテリアがテレパシーを介し、自己紹介を行う。


「まさか、彼女の正体って……!」


 俺の脳内に数日前の記憶がよみがえる。


 俺たちがオニカザ町から離れる際、俺たちはイドルさんから彼の『妻』についての話を聞いた。


 『金属系魔術の研究が大好きで、とても強くて、とても愛おしい人』と聞いていたが、この魔力保有量からして、間違いなく彼女がイドルの妻であろう。


『……やあ、親愛なる外星の同族よ。ワタシの名前はプルサ・ウルティメイト。キミの家族と思われるホムンクルスは現在、我々の保護下にある』


 続いて、プルサ師匠が話を切り出す。


『そっか……ところで、さっきのレーザー攻撃はどのような意図があったのかな?敵対したいんだったら……準備はできているけど』


 マテリアが何らかのスキルによって金属片を空中に作り出して攻撃準備を行いつつ、リンガが行ったレーザー攻撃について問い詰める。


 師匠とナーシェンがとたんに考え込む。


『ここは素直に真実を言うべきだろう』

『いや、「あれは俺たちじゃありません」なんて言ってもそう簡単に信じてもらえるか?』

『でも、ウソついても後々面倒だし……』


 俺のスキルたちも対応に困り、話し合いを始める。




『あれは、俺たち3人と対立している人間が放った攻撃です!』


 俺は、スキルたちが結論を出すよりも先に、誠心誠意を込めて真実を伝えた。


『……ウソでは、ないよな?』


 ロンリネスが俺の顔を覗き圧をかける。


『はい。あれは、俺たちの攻撃ではない!リンガという人物が仕掛けたものなんだ!』


『そうか……誤解してすまなかった』


 俺の回答に納得したのか、ロンリネスが俺の顔から眼をそらす。


『こちらこそ、変に圧をかけてごめんね……』


 マテリアも攻撃準備をやめ、静かに頭を下げた。


『さてと……そのホムンクルスってのは、どこにいるのかな?』


 直後、北東の方から俺たちのもとに、翼を生やした何かが猛スピードで飛来してくる。


「あっ、あれは!」


『イドル!!』


 イドルさんは浜辺に降り立ち、せき込みながら翼を消滅させた。


「ワント、ユー!ワント、ユー!」

「グット、ヴェリグッド!」 


 お互いの身体を抱き合いながら、現地語と思われる我々には聞き取れない言葉で泣きながら再会を喜ぶイドルさんとマテリア。


『よかった……本当によかった……!』


 すぐそばでイドルさんの無事を喜ぶロンリネス。




『ヨウロ・ギンズさん、ナーシェン・ウルティメイトさん、私の旦那を助けてくれてありがとう!』


 数分後、事情を知ったマテリアさんが頭部の兜を脱ぎつつ、俺たちに頭を下げる。


 中にいたのは、緑がかった髪で金色のメガネをした赤い目の情熱的な女性であった。


『うちの息子が世話になったな』


 ロンリネスさんも兜を脱ぎ、俺たちに頭を下げる。


 彼の素顔は青みがかった黒髪でナイスミドルな痩せ顔であった。


 


 数日後、マテリアさんが持っていた遠距離通信用の魔道具を介し、我が国と惑星キンキランドにあるぐらい王国とのあいだに仮の国交が結ばれた。


 しかし、事態はこれだけでは終わらなかった。




 俺はこの件が契機となり、各新聞社から英雄と称され、讃えられるようになり始めた。

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