「愛憎」では括れない、華族令嬢と使用人の切ない絆。

企画の参加作にあったので読み始めたのですが、気づけば最新話まで読んでしまいました。

まず、主人公がとても魅力的です。気が強くてお転婆でありながら、華族令嬢としての聡明さ・振る舞い・スキルを存分に生かしている強かさ。身近な人々に対して、愛していながらも憎むべき点をかかえて思い悩む脆さ。行く末を見守っていたくなる主人公です。

時代にそった描写も丁寧でした。家の格式高さを象徴する「和」と、モダンで華やかな「洋」が入り混じった昭和初期の文化。そして何と言っても、少しずつ忍び寄ってくる戦争の足音が毎回巧みに描写されていて、これからどうなるのかと物語に引きこまれます。
読み手としても書き手としても、本当に読んで良かったと思う作品です。