珠玉の一作

  • ★★★ Excellent!!!


いつもは商業作品でお目にかかる草野先生がカクヨミで初投稿された作品です。レーベル色のない、先生ご自身の感性が反映されていて素敵です。
私は草野先生の大ファンなので、是非多くの方に読んでいただきたい!っと遅ればせながら紹介を兼ねたレビューを書いてみました。
以下ネタバレを含めた感想です。
全86話の長編。毎日更新があって1日の楽しみでした。新聞小説を読んでる感じかな(今どきいない?)
全く中だるみがなくて次話が待ち遠しいかったです。
場面展開が気を持たせる感じで、えっ、そこで切るの⁈って、サイコーでした!
作品背景は昭和3年から昭和22年くらいのようです。
人の価値観、生活様式が令和の現代とは全く違います。草野作品はディテールの調べ上げが凄いので
音楽や家の間取りとか作品の空気感に自然な説得力があります!(故秩父宮妃の徒歩通学なんて感涙モノ)
主要4人の登場人物の距離感も絶妙。一堂に会するのは雛の茶会の見送りの一場面のみ。
暁子と貢の関係性も愛憎に近い関係。誘拐事件で暁子を助けたのも父親の失点を挽回したい貢の下心とか二人が戦後に再会してすぐにケンカした挙句、暁子の「戦死すればよかったのに…」なんてセリフ、商業誌じゃムリそう。人間関係も人間性もリアル感がいい。本当の人間は全然綺麗事だけじゃないし、言行不一致なんてあたりまえ。真雪の野蛮な本性も。やはりB級戦犯なんでしょうか。1番好きなキャラだけどいろいろやってそう。倫子のモデルは加賀百万石のお姫さまっぽい気がする(従兄弟と結婚されてるところも)
暁子パパの憎めないところや菊野の秘めた想い、クニが手紙を隠さなかったら暁子と貢は全然違う展開になってたかも!でも暁子がクニをいつの間にか許してる場面なんてうるってきた。
あといくつかのアイテム。イニシャルハンカチが燃やされる場面もリアル。南方戦線は筆舌に尽くし難い…合掌。真雪のカメラはどうやって再び登場するのか待ってのですが…
暁子を2度も列車の現場から引き戻した貢はやっぱり暁子だけのヒーローか…?
最終話、黒田運転手こそ作中唯一人の王子様。
まだまだ私の中で興奮冷めやらない、列車ロス。

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