第22話 うつみん家①
「時間です。筆記用具を置いてください」
試験終了を知らせる教師の声を聞いた途端、教室では歓喜の声が響き渡っていた。
「っしゃあ!終わったぁ!」
「ようやく部活ができる~」
「まじで疲れたぁ」
「なんとか赤点は回避できそうだぁ」
思い思いの声が聞こえてくる中、俺もひっそりと安堵するように息を吐いた。
完徹……したからといって点数が取れるわけでもないと知っていた俺は、半分諦めモードで試験に挑んだ。だが、教科書の見直しや演習問題を解いていたこともあってか、わかる問題が多くすらすらと解き進められたのもまた事実。
「かずぅ……。俺はきっと、赤点を回避できたと思う!」
「そりゃ良かったな」
「おう!これで思う存分、恋活ができる!」
「あぁ……はいはい」
「んでさ、和くんも一緒にどうっすか?」
「……どうっすか、って何がだよ」
「一緒にマッチングアプリに登録しようよ~」
すり寄ってくる尚弥を睨み付けながら俺は答えた。
「しねぇよ!俺はこれから用事があるから帰る!」
「そんなぁ……。友達を見捨てるなんて薄情だぞ!」
「うっせぇ。他を当たれ」
荷物を持ち、片手で手をヒラヒラさせながら教室を後にしようとした俺は、クラスメイトからの誘いも断りながら立ち去った。
『今から向かうけど、何かいる?』
うつみんに連絡を入れてすぐ、
『何もいらんよ』
即レスの対応に俺の表情は綻んだ。
――何もいらんと言われてもなぁ……。コンビニで何か適当に買って行くか……。
そう思い、俺は近くにあるコンビニに立ち寄ることにした。
コンビニで買った物をぶら下げて歩いている中、マンションが近づくにつれ俺の鼓動は速くなっていた。
――やべぇ……なんかめちゃくちゃ緊張してきた……。お隣さん家に行くだけでこんなにも緊張するもんなのか……?ただただ俺が意識し過ぎなのか……。まぁ、おそらくはそうだろうけども……。
ドキドキドキ――
速まる鼓動をどうにかして抑えようとするも、手段がわからないまま、気付けばマンションに到着していた。
一旦呼吸を整え冷静になろうとするも、余計に緊張してしまう始末……。
――もう!どうにかなるだろ!
開き直った俺は解けない緊張を抱えつつ、うつみん家のインターホンを鳴らした。
トテトテと走ってくる足音が近づき、しばらくするとドアを少し開けながら、うつみんがひょっこりと顔を覗かせた。
「和くん!おかえり~」
そう言い、ドアを全開にしながら俺を招き入れた。
「あのさ……前にも言ったと思うけど、誰が来たかを確認してから開けないと危ないよ」
「なんか聞いたことあるねぇ」
「俺が言ったんだよ」
「そだっけ?……まぁまぁ、どうぞ入っておくんなまし」
ドアを全開にしながらうつみんがにこやかにしているのを目の当たりにすると、それ以上は何も言えなかった。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞぉ」
俺は用意されたスリッパを履き、うつみんの後を付いていった。
「あっ、そうだ。これ……大したもんではないけど……」
俺はコンビニで買ったお菓子とプリンが入った袋をうつみんに差し出した。
「気ぃ使わんでいい言うたのに……けど、ありがとう!」
俺にとっては破壊力でしかないうつみんに笑顔を向けられ、思わず顔を背けてしまった。
ごそごそと袋から買ってきた物を取り出しながら、うつみんが俺に尋ねてきた。
「というか、お昼まだなんじゃないの?」
「あぁ……そうだなぁ」
「作ってあげるよ!」
「えっ?」
「向こうで待ってて~」
うつみんに背中を押され、俺はリビングに置かれたソファへと連れて行かれた。
――何作ってくれるんだろ……。
楽しみと不安な気持ちを抱えつつ、俺は料理が出来上がるのを大人しく待つことにした。
恋 to 愛~俺が恋したお隣さんの愛する人は俺以外~ 虎娘ฅ^•ﻌ•^ฅ @chikai-moonlight
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