第3話 〝藤本新〟〝フォックスジャブ〟

「君は……………!?」


黒鉄の前に降りた藤本新。しかし顔を隠すために狐の仮面をつけて。


「下がってて」


藤本は黒鉄に迫る不良の集団を顔面パンチで吹き飛ばす。


「速すぎて……拳が見えない……!」


黒鉄の驚愕の声を聞かず、藤本は新たな体勢に――。


〝フォックスジャブ〟


バゴッ!


ジャブとは思えない威力。神速の拳が不良の意識を刈り取る。

この状態の藤本は〝藤本新〟とは言えない。『モブ』とは言えない。この時の彼は、『主人公』だ。


「大丈夫?」


藤本は黒鉄と白雪に目を向ける。


「……大丈夫だよ」

「私も、大丈夫です」

「………そう」


藤本は戦闘態勢に入る。


「てめえら、ひよってんじゃねえぞ!行けええええええええ!!」


不良のボス(名前知らない)は焦っている。自分で来る度胸のない奴だ。


(……差ぐらい分かると思うんだけどなぁ)


〝フォックスジャブ〟


(これならジャブだけで何とかなりそう)


「僕にもやらせてくれ」


黒鉄。


「助けないよ」

「大丈夫さ」


黒鉄の木刀に気迫が籠る。


「銀河天文流第八秘剣・〝白夜叉〟」


流れるように攻撃を叩き込む。

さすが剣術。型だけの剣舞や剣道とは実践的という点で違いがあるな。


「第一秘剣・〝月光〟」


先ほども見せた高速の剣技。けど威力では八が高いな。


「僕も行くよ」


(流石に数が多い……)


ちょっと何発か打ってみる。


〝フォックスジャブ〟


通常のジャブは連発。

今までのはただ軽くどついてただけ。

これが本当のジャブだ。


「………後は君だけだよ」

「終わらせよう」


すると不良のボスは怯えた様子で――。


「悪かった、悪かった!頼む、許してくれ!」

「君だけ助けを乞うのかい?僕には仲間を連れてきてくれたってのに……」


木刀を構える黒鉄。


「確かにこの人に何もナシじゃちょっとダメかもね」


そう言って拳を軽く握る藤本。


銀河天文流第六秘剣――。

軽く握って力を入れずに―――。


「〝滝乱〟!」(ろうらん)

〝フォックスジャブ〟


「がああああああああああ!!!!」


「…………白雪さんに言いたいことがあるんでしょ?」

「………?」

「?」


藤本と黒鉄の頭に疑問符が浮かぶ。


「ああ、あれは定例報告だよ」

「?」

「僕、彼女のボディーガードやってるから……見られないようにこういう場所だったんだけど……」

「ま」

「ま?」

「紛らわしい……」



「いやー、告白じゃなかったねー」

「誰だよ告白なんて言ったやつ」

「けどお兄ちゃん、相変わらず動けてたね」

「確かに」

「強かったね~」

「まあ、トレーニングはしてるし……」


すると兄弟たちは呆れたように。


「じゃあメニュー言ってみて」

「?一日15kmの全力疾走と、腕立て腹筋スクワット500回ずつ。重心トレーニング……ぐらい?」

「じゃあそれにかかる時間」

「全部合わせて二時間くらい」

「はあ……」

「まあ、分かってはいたけどさ、兄さん…自分が思ってるよりすごいことだし、兄さんの強さは決して中の下とかじゃないからね」

「じゃあ下の下?」

「「「「「上の上だよ!」」」」」

「うそー」

「「「「「……はあ」」」」」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モブパンチ~僕はここにいる~ ronboruto @ronboruto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ