第二話

道路と直角に設置されたベンチの前には数メートルの空間があり、奥に自動販売機がある。

その自動販売機の前に、ボロボロの服を着た白髪交じりのおじさんが項垂れて座っている。


今、一瞬、目が合った気がする。

悦子はすぐに俯く。

ペットボトルをカバンにしまう。


悦子は陽気なBGMが流れていたスマホゲームをGoogleに切り替え、「おじさん 地べた なぜ」と検索する。

Yahoo知恵袋の「どうして床に座り込むのがいけないのですか?」に対するベストアンサーが出てきたが、参考にはならない。読む気にもならない。


バスはまだ来ない。早くバスが来て欲しい。


悦子は心臓がバクバクして、通り過ぎた車の音にビクッと反応してしまう。

おじさんと二人だけの空間。

周りには誰もいない。


「大丈夫ですか?」と話しかければ、おじさんはどういう反応をするだろうか。

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