第四話
「あのおじさんさぁ、なんでベンチに座んないと思う?」
悦子はイヤホンのせいにして、聞こえないフリをする。
女性は悦子に無視されたことは気にもとめず、カバンからスマホを取り出して何か入力し始める。
バスは一向に来る気配がない。
とても静かだった。風の音や街の雑音も聞こえない、静寂の時間。
悦子は、女性に話しかけられてからずっと緊張していた。
心臓の音がずっとバクバクと鳴っている。ジワッと嫌な汗をかく。
隣に座っている女性に聞こえるんじゃないかと心配になる。
何か自分にできることはないか、必死に考えている。
暫くすると、女性が再度立ち上がり、おじさんの方へ歩いて行く。
悦子は何も聞こえていないイヤホンを外し、今度は二人の様子をジッと見つめる。
何か会話したあと、座っていたおじさんが女性の肩を借りて立ち上がり、二人で悦子の座るベンチへとゆっくり歩いて来る。
悦子は、二人から目を逸らす。
おじさんは女性に恥ずかしそうに言った。
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