第4話 修行と旅立ち
「《
この
その動物たちが持ってくる果物だが、青くてなんだかブツブツしているものから、まるでリンゴのような見た目のものまでいろんな種類がある。青い果物は桃のような味がしておいしく、もう一つのほうは味もリンゴなのでリンゴなのだろう。
今日も家まで二匹でやってきたクマのけがを治療している。この森でケガした動物たちの治療ぐらいなら大体の傷は治せるようになるぐらいには
どうやらあの二匹のクマは夫婦なようだ。言葉が分かるわけじゃないが、夫婦喧嘩がヒートアップして
奥さんクマが旦那さんクマを爪で傷つけてしまったみたいなことが、ニュアンスで伝わってきた。夫婦仲良く森の中に消えていく。
なんっでクマには彼女がいて、俺には彼女どころか友達の一人もいないんだーーー!!!!!!
ふーーー、危ない危ない、危うくキレるところだった。
何を俺はクマに嫉妬してるんだ。
俺は今までだって大丈夫だったじゃないか。
発情期の猫がニャーニャー、ニャーニャーうるさい時も・・。
けがの診療にカップルの鳥どもが自慢するように来ることも・・!
ある時から屋敷の前で交尾するようになったあの鹿どもも・・!!!!!
「カノジョぼじぃぃいよおぉおぉぉぉぉぉ!!!!ざびじぃよおぉおぉおおぉ!!!!!」
30分ほど泣いたらすっきりした。
決めた・・・・!!
俺はこの屋敷を出る!!
そしてカノジョを作る!!!
◆
まあただ今すぐに人里へ出るわけじゃない。もしかしたら外の世界ではもう魔王によって人間はほろぼされているとか、男が滅びた終末世界で外に出たら捕まえられて一生監禁生活とか、難易度くそ高い世界で俺程度の魔女何て奴隷にされてもう自由の身にはなれないとか、とかとか。
そんなことが起きると怖いので魔法だけでもある程度できるようになってから旅に出よう。
目標はー・・、そうだな・・とりあえずあと40年!いま魔法を十年くらいやってきて初級を全部できるようになったくらいだからな。
40年くらいあれば一通りできるようになるだろうという考えだ。
となれば早速特訓だ。俺は屋敷に入り、正面の大階段を上り書斎のあるほうへと進む。
書斎に入ると、左側にある本棚に魔法の本がまとめてあり、魔法の本は初級、中級、上級、・・番外編?番外編がある。なんか面白そう。
◆
旅に出ると決めて40年がたった。
魔法の出来具合はというと、中級はマスターした。が、上級はさわりぐらいしかできていない。なぜかというと番外編のせいだ。
番外編の内容は、ほかの魔法とは違って、炎を出したり、水を出したり、風を起こしたり、といった事象を起こすものではなく、空間に直接作用するような魔法。いわゆる空間魔法というやつだ。
空間魔法はとても便利な魔法だが、魔力の消費がすっごい多い。空間魔法を使うときはいつもの倍はご飯を食べなきゃいけないくらいだ。それだけ?って思うか?まあそれだけだ。
これはおそらく魔女だからだ。魔女って言う種族が魔法を使わなければ食事しなくても生きていけるのだから、食事をすれば結構な量の魔力が得られるのだ。
たとえばリンゴ一個食べれば2,3時間は魔法を使い続けられる。実に、低燃費。
で、そうそう空間魔法だ。例えば《
こんな単純な魔法だが、奥が深い。入れ替えたい空間を魔力で覆うようにするのだが、この調整を適当にしてしまうととても危ない。地面に置いたものを入れ替えるときに地面ごとえぐってしまったりする。地面ならまだいいのだが人と人の位置を入れ替えようとしたときにそれが起こってしまうと、もうホラーだ。
ほかにもこの手の魔法であるあるの、《
この空間魔法がすごく楽しかった。楽しかったから、空間魔法に30年使ってしまって上級魔法が満足にマスターすることができなかった。悔いはない。
だってこの空間魔法、女の子にモテるに違いないから。
なんでって?
この魔法、どこにデートに行くにも一瞬で行けて、荷物もいくらでも持ってあげられる。だからこそ30年もかけた。
だって火とか出せてもモテねーし!
ま、そんな冗談は置いといて・・・やっと40年そろそろ旅に出よう。
まだ読んでない本やら着替えやらを《
盾にしよう。
50年の間になんとなく考えていた俺のもち武器だ。防具か。
その理由は、筋力とかは魔力で何とでもなるけど、剣を持ったとしても技術がないのでうまく扱えないだろうということ。どうせ攻撃は魔法があるから、あとは防御で大盾でも持ってようかなって感じだ。
盾にも技術はいると思うが、体が全部隠れるくらいの盾にしたのでもうここに隠れて魔法を打つだけだ。さすがにそんなかっこ悪い戦い方はしたくないけど。
俺は屋敷にあった一張羅に着替える。下は黒のスラックスに上はワイシャツにサスペンダーをして、仕立てのよさそうなローブを羽織りまるでどこかの貴族のご令息かのような見ためをしている。ちなみに母親魔女のものと思われる、いかにも魔女な三角帽子もあったがさすがに男が被るものではないだろうと遠慮した。
しばらくは帰ってこないつもりなので屋敷を大掃除した。ほとんどの部屋を使っていなかったので、埃が被っているくらいで、特に疲れるようなことはなかった。そして俺は最後に母親の墓として作った小さな岩に手を合わせる。
「100年間誰も来なかったが一応大事なところだからな。《
会ったことはない大切な母親との思い出の場所だ変な輩に荒らされたとあっちゃたまったもんじゃない。
「よし!行くか!」
――――生まれて50年、初めての旅だ。
★★★★★★★★★★★★★★★
お読みいただきありがとうございました!
もしかして、ヒトじゃない!? メダカ人 @medakajin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。もしかして、ヒトじゃない!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます